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    hao_da_

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    結婚するゲーラとメイスの話です。

    多分もう、お互いにずっと「結婚するか」

    唐突に飛び込んできたその言葉に、メイスの世界は数秒止まった。なにかナンセンスな冗談かと思い声の主を振り返れば、不自然な程にこちらから目を背けたゲーラの横顔が目に入る。彼の赤い髪と境目が分からなくなるほどに肌も赤く染まり、最早全身が火を噴いているような─ああ、あの懐かしい日々を思い返すような─そんな様子の同居人、腐れ縁、セックスの相手、相棒、友人?恋人?を見つめながら、メイスの頭にはゲーラと出会ってからのあらゆる出来事が目まぐるしく駆け巡る。死ぬ間際でもないのに走馬灯とは、縁起でもない話だ。意識は半ばそれに囚われながら、メイスはああ、と声を漏らした。たった数十秒で口はからからに渇き、その簡単な一言を放つまでにやたらと口が重かった。

    いつの間にかこちらを向いていたゲーラの視線に射抜かれ、メイスの意識は今へと戻って来た。ゲーラは真っ直ぐにこちらを見ながら、顔色は未だ落ち着かないまま。握り締めた拳は微かに震えている。表情は真摯さと強い意志に溢れているが、どこか様子を伺うようで…多分、恐れているのだろう。目の前の男が、どういう返事をするのかを。
    それに気が付いたメイスは、なにか途方も無い気持ちになった。ああ、こいつは、たかがプロポーズで身を震わせるほど─自由で何処にでも行けるその身に枷を掛けてもいいと。そして相手は何故か俺がいいらしい。それぐらい、俺に惚れている。ということだと思う。
    じわじわと腹の底から湧き上がるのは、どうしようもない居心地の悪さと理由の分からない不安だった。メイスは今、自分がどんな顔をしているのか全く分からなかった。全ての感覚が遠く、腹を渦巻く不安だけが生々しく蠢いているのを感じる。

    「メイス」
    ゲーラに手を取られ、メイスは初めて自分の手が氷のように冷たくなっているのに気がついた。ゲーラの熱が自分の皮膚に染み込んでいくのを感じていると、臓腑を食い破らんとする何かが勢いを弱めていく。
    「いい、のか」
    やっと出た声は掠れて随分と情けなく響いたように思う。息の吐き方すら分からない。
    「…お前がいいんだろーが…」
    そう言って口を尖らせるゲーラは拗ねたティーンそのもので、メイスは思わず吹き出した。静かな水面に波紋が広がる様に、二人の空気が緩んでいく。
    「お前、バカだろ」
    くすくすと笑いながらそう言ったメイスを見て、ゲーラはやっと緊張が解けた。
    「今更だろ」
    「そうかよ」
    メイスはゲーラの前髪をかき揚げ、互いの額をそっと近付けた。赤い瞳に映った自分は見たことも無い腑抜けた間抜け面で笑っている。
    お前そんな顔もできたんだな、メイスは瞳の中の自分にそっと語り掛けると、そのまま目を閉じて口付けをする。
    きっともうどうしようも無いほどに惚れている。
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