まんじゅうこわい日常系じんわり怪談。
※びっくり・スリラー・ミステリー・退治物ではありません。
※原作にはないサニキャス・無線機等が出てきます。
歌仙は自室に卓袱台(ちゃぶだい)をだして、いつものように無線機の電源を入れた。
2200年代ではローテク扱いされたり時代錯誤と言われることもあるが、この時代の無線機は素晴らしい性能をもっていて、よほどの状況でなければ、音声にノイズが混(ま)じることはない。
歌仙の手元の無線通信機は、通信状態でも美しい夜の静寂(せいじゃく)をつくりだす。
無線機とは、書いて字のとおり、無線で送受信できる通信機のことだ。横文字で書くとトランシーバー。それ自体が送信機であり受信機で、同じ周波数に合わせたトランシーバーを同じように携帯している者と、決まった距離のあいだでしか使用できない。
そんな無線通信機を審神者が用意したのは、建前では男士達が本丸生活には欠かせない現代の電子機器に慣れ親しめるようにという配慮(はいりょ)だった。
本音はというと、人見知りをしたり、言動に難があったり、どうにも近づきがたい雰囲気を醸(かも)しだす男士達が本丸の一員として皆と仲良く快適にすごせるようになるように、とにかく歌でも興味のあることでも、何でも発信して知ってもらおう、会話の糸口をつかんでもらおう、といったところだった。
発案したのは、審神者と陸奥守吉行。陸奥守は毎週月水の20時頃から、興味の赴(おもむ)くままに、現代の流行について語るラジオをしている。
水曜日は新撰組の刀達がよくゲストに呼ばれ、お取り寄せスイーツや旬の食材を楽しみながら、日常の徒然(つれずれ)とした楽しみについて話していた。
新たな刀剣男士がやってくると、大抵(たいてい)その次の水曜日には陸奥守のラジオに出演し、その後はあっという間に男士の輪の中に加(くわ)わっていけるようになる。
今や、あの大倶利伽羅や大典太光世ですら、誰とでもすんなりと内番をこなせるまでになり、本丸ラジオ作戦は大成功をおさめていた。
この放送も試(こころ)みの当初は、発信と受信はネット回線を介(かい)したサニキャスのプライベート発信だった。こちらは周辺の基地局や衛生を経由し、データは自動録音され、放送終了後には自動的に使用したアカウント内で放送終了一覧にバックナンバーとして公開されていた。
攻略情報でも生活の知恵でもない、内輪も内輪な、とある本丸のよしなしごとを、男士達が好きなように雑談しているだけ。……という音声データをサニキャスのサーバーに残しておくというのは、審神者にとってはどうにも気が引けることだった。
だがなにより、暇ができた男士達が次から次へと配信してしまい、たった一月(ひとつき)で莫大(ばくだい)な量のくだらないデータが溜(た)まった事実を目の当たりにした審神者は、このままだとサニキャスのサーバーを自分の本丸の男士がお遊び配信の雑談データで潰(つぶ)してしまうと、危機感をいだいた。
そうして、電子機器にそう明るくない審神者の一昼夜の検索という努力によって、放送媒体はトランシーバーに行き着いたのだった。
無線機どうしで、どこの中継地点も経由しない通信なら、誰の迷惑にもならない。
本丸の立地的に無線が他の電子機器や施設に影響を与えないことは、確認済だった。
「……サタデーホラーナイト。今日は僕一人でお送りするよ」
凛とした歌仙兼定の声が、浮かない口調で放送の開始を告げた。
歌仙は青江の提案で、毎週土曜日の深夜1時から深夜2時までのたっぷり一時間を放送時間と定め、トークを垂れ流しにしていた。
おかげで歌仙は本丸内で起こるあれこれの会話に多少は参加できるようになってきたし、周囲も結構な人見知りである歌仙に対してどう対応していいのかわかってきている。
「……と、言っても、僕は幽霊や妖怪についての造詣(ぞうけい)は特に深くはないし、興味もないんだ。にっかり青江が話すような話題が聞きたい男士の期待には応えられないので、そのつもりでいてくれ」
淡々と話すようでいて、仲良くなった男士には不機嫌まるわかりの口調で歌仙はしゃべり続けたが、少し黙(だま)った、ちょっとした間(ま)にすべり込むように、国広達と和泉守兼定の声が無線機から聞こえてくると、口を閉じた。
『にっかり青江はどうしたのだろうな?』
『歌仙さんが楽しみにとっておいたお饅頭(まんじゅう)をそうとは知らずに食べてしまって、喧嘩(けんか)になったみたいだよ』
『それはもしかして、あの限定品の? ならんで買うと言って、わざわざ非番をずらしたと聞いたぞ』
『あぁ、それならオレも知ってるぜ。昼間、歌仙が随分(ずいぶん)上機嫌だったからそれとなく訊(き)いてみたら、あの限定饅頭が手に入ったから、主の分にひとつと、放送の時の茶請けにするって嬉(うれ)しそうに……』
無線であるが故(ゆえ)に、すべての受信機(レシーバー)で相互に音声を送受信できてしまう仕組みが仇(あだ)となり、この放送を聞いている全ての男士に対して、歌仙が不機嫌にしている理由が明かされてしまった。
「…………、……国広達、マイクのスイッチが入りっぱなしだよ。あと和泉守、少し声量を落とさないと、隣室に迷惑だろう」
『あっ、本当だ! すみません歌仙さん! 今すぐ切ります!』
堀川国広の元気な声がながれて、ふたたび無音が訪れるまえに、いくつかプツプツとスイッチを切るノイズが入った。
どうやら、国広達の部屋以外(いがい)に置いてある無線機のマイクのボタンも、オンだったようだ。
放送後に切り忘れたまま電源を落としたり、質問等の会話企画に参加をした後、送信スイッチを切り忘れている事はよくあることだった。
今まであまり意識してこなかったリスナーの存在に、歌仙は少し頬が熱くなる。
だが、ここで放送を切ってしまっては、名刀と名高い歌仙兼定は一人でちょっとした放送すらできないと思われてしまう。
それは歌仙兼定のプライドが許さなかった。
……実際、歌仙が人見知りで上手(うま)く話せないあまり、以前戦場で大倶利伽羅と険悪なムードになってしまった事などは、本丸のほとんど皆が知っているため、いまだに絶妙に気を遣われている自覚はあった。
気遣われてることを自覚しなくて済むくらい緊張できれば、こんな風に一人で悶々(もんもん)とすることもなかったのだろうが、生憎(あいにく)と歌仙の場合は人見知りはするものの相手が恐いわけでも、自分が嫌われることが恐いわけでもない。
とにかく、普通にしゃべろうとすると相手が引くか気を遣うようになるので、その瞬間、コミュニケーションが上手くできない自分が恥ずかしいような、そんな気持ちでカッと頭に血が昇ってきてしまうのだ。
とはいえ、幸いなことに本丸にはコミュニケーションというものを上手くこなせる男士の方が少ない。
大体は自分の主義主張で開口一口目から会話の全力ドッヂボールをする者と、あまりにも自己主張をせず、誰かが優しく投げたボールを全力で避ける者に分かれているため、歌仙自体が特別な扱いを受けているわけではない。
ただ、歌仙は前者と後者を混ぜて、前者が来ると、投げつけられる全力の主張から逃げるためにキレ芸を始めてしまうという拗(こじ)れ方をしていたので、審神者や、昔からの交流がある小夜左文字達は、大なり小なり、気にかけていたのだ。
「――ぇぇ、コホン。それじゃあ、今夜は僕、歌仙兼定だけのサタデーナイト放送だ。……そうだな、今日は季節の詩歌の話しなんてどうだろう。……“夏山の 影をしげみや たまほこの 道行き人も立ち止まるらむ”……紀貫之の歌だ。最近は夏で暑いから、遠征先でもつい日陰(ひかげ)を探してしまうだろう? そんな風に当時の人々も涼を求め、日陰に立ち止まったんだろうね。夏の山の、茂った木の下に足を止める人は、涼を求めて足を止めたのだろうかと、彼が思いを馳(は)せた歌だ。彼の歌は日常のちょっとした出来事を、詩的かつ情緒的にして、特別なもののように見せてくれる。日々のちょっとした出来事も、こうやって歌にすると輝きだす――そう、改(あらた)めて思わせてくれる歌だ。最近では絵や写真も手軽に楽しめるようになっていいね。皆も心に響くことは、気軽に形にして残すといい。完全じゃなくとも、思い出すきっかけくらいになれば――」
しゅる、と畳の上で膝をすべらせる音が背後から聞こえ、歌仙は思わず息をのんだ。
「――……僕だよ」
静かで、少し湿ったような、甘いような、独特の声がする。
間違えようもなく、それは馴染(なじ)みのあるにっかり青江の声だったので、歌仙は正座した姿勢もくずさず、後ろも見ずに言いはなった。
「青江か。一体何をしに来たんだい」
少し怒った声で尋ねてから、歌仙ははっと、放送で本丸の夜更かし男士達に聴かれてしまっていることに気づいたが、すでに国広たちによって不機嫌の原因をバラされた後なので、多少悪い具合に開きなおって、口を噤(つぐ)み、背後からの返事を待った。
「なにって、これは君と僕がいてはじめて成り立つ番組じゃあないか。しゃべりに来たんだよ」
歌仙は人知れず顔をしかめ、いったん曲げた口を開いた。
喧嘩までしたというのに、まるで忘れてしまったとでも言いたげな、全く気にした様子もない背後へ向かって、歌仙は少し棘(とげ)のある口調で言う。
「言うことはそれだけかい? ……僕の饅頭を勝手に食べたことは、詫びなくても放送には差し支(つか)えないということか」
「――そんなことあったかな? ……まだ気にしていたのかい」
――忘れていただって!? 日付の上では昨日のことだが、一晩も経(た)たないうちに、忘れるはずがないじゃないか。この期に及んで悪ふざけがすぎるぞ!
少し考えて口裏を合わせてはきたが、悪びれるどころか一笑するような雰囲気で言われた言葉に、歌仙は吸った息と出かけた言葉を呑(の)みこみ、背筋をのばした。
喧嘩を再開したいのは山々だったが、毎週この時間を楽しみにしている男士達の事を思うと青江との口喧嘩を放送したくなかった。
何より、饅頭くらいでここまで腹を立てるのはよくないと、自分でも自覚していた。
……饅頭ではなく、勝手に食べてしまっておいて悪びれず、言いわけをしたばかりか、半日もたたないうちに忘れてしまったと嘯(うそぶ)く青江の態度に怒っているわけだが。
「……食べ物の恨みを馬鹿にしない方がいい。衣食足りて礼節を知る。管仲の言葉だが、全くその通りになってしまいそうだ」
もういい、君が謝るまで、しばらく顔も見ないぞ。
「おぉ、怖い。部屋の空気が凍りそうだよ。怒りすぎじゃないかい、歌仙」
――――それまで、二刀開眼だってしてやるものか!
「…………」
少し肩を怒らせた歌仙は、振り返りたい気持ちも言葉もぐっとおさえて黙る。
問いかけに返事をしないでいると、背後からため息が聞こえた。
「……生憎今は深夜で、僕はどうすることもできないから、明日の朝一でお詫びの品を用意しようじゃないか。……顔を合わせて喧嘩になっては困るから、今日は、後ろに控えたままでいるよ。君も、横に並ばれるよりはマシだろう?」
歌仙の気持ちは全く晴れていなかったが、どこかで気持ちを切り替えて、今やるべき事をしなければいけない。
「それじゃあ改めて。歌仙と青江のサタデーホラーナイト。はじまるよ。……今日は…そうだな、古典落語の……、まんじゅうこわい、なんて題材について話そうか」
後ろから聞こえてきたテーマに歌仙は目を見開くが、放送時間がおしているので、文句を言う前に口を動かした。
咳払いをしてから題材に言及する。
「……ゴホン、……原話は中国の笑話集の訳本と言われているね。最近は、寿限無(じゅげむ)なんかとともによく親しまれている古典落語だ」
「そうそう。内容は、暇を持てあました男たちが、自分にとって恐いものを教えあい、脅かしあって遊んでいた。そこである男がトンチを利かせて、本当は自分の好物である“まんじゅう”を恐いと言いはり……仲間に“まんじゅう”を集めさせ、怖がるふりをして独り占めしてしまうという笑い話さ」
「……まったく怖い話じゃないが、いいのかい青江」
愉快そうな声が返ってきた。
「こういうのも、たまにはいいんじゃないかい。……それに、何を恐いと思うかどうかは人それぞれだよ。――――これから起こることを恐いと思うかどうかも、人それぞれさ。あんがい、皆ぞっとしてくれるんじゃないかって、僕は期待しているんだ」
たっぷり溜(た)めを作った口調で言われ、歌仙はそこではっとした。
まさか、青江は何かしら仕込むつもりで、自分が振り返らないようにわざと嘘をついたのか。
「一体何をするつもりなんだい、青江」
「…………」
返事が返らない。
やはり何かするつもりだったのか。
ため息をついて後ろを振り返ると、そこには誰もいなかった。
「……あれ?」
夜間はこういうもので闇を楽しむのも風流だと、部屋においている電子行灯(あんどん)の、ゆらぐ蝋燭(ろうそく)の炎を模(も)したLED(※発光ダイオード)のあかりが、歌仙のそれほど大きくない部屋の四隅の陰(かげ)を、暗く揺らしている。
「にっかり青江?」
声に応える者は、いない。
周囲に目配せしても、もちろん、誰もいない。
「…………」
誰もいないはずの部屋の隅に、目に見えない何かが、じっと息を殺して潜んでいるような気すらおぼえて、歌仙は黙り込んだ。
黙ることで、部屋の中に無音が満ちていく。
急に、障子(しょうじ)向こう側の闇が暗く濃くなったように感じられて、歌仙は身体をかたくした。
今夜は、こんなに暗い、物音一つしない夜だっただろうか。
まるで、月のない真冬の夜のようだ。
その直後、不意をつくように、部屋の外からにっかり青江の声がした。
「歌仙。僕だ、にっかり青江。入ってもいいかな」
「……っ」
おどろいて息を呑んだ歌仙は、返事をしそびれた。
この声が本物のにっかり青江なのか、わからなかったからだ。
返事をしそびれている間に、障子の向こうからさらに声がかかった。
「――昼間のお詫びに、饅頭を作ってきたよ。できるだけ早く用意して放送に間に合わせようとしたんだけど、君と一緒に作る時のように上手くいかなくてね。……君には悪いことをしてしまった。ごめん。……一人でラジオなんて、僕への愚痴くらいしか言うことがなくて、大変だったろう」
紛れもなく、歌仙と昼間喧嘩をした青江である口ぶりに、歌仙の唇から息がもれる。
「……入ってくれ」
歌仙が障子の向こうへ声をかけると、片手に盆をもった青江が部屋へ入ってきた。
と、入って数歩のところで、青江は不思議そうな顔をして立ち止まる。
「……あれ、今日はずいぶん涼しくしているね? いつもは僕がお願いしてもしてくれないのに……空調の設定温度を下げる話だよ?」
「え、……いいや、僕はいつも通り、28度にしているんだが」
「えっ? 28度でこんなに冷えるものなのかい? 部屋がまるで冷蔵庫のようだよ? 寒くないのかい?」
青江に言われて初めて、歌仙は自分の体が震えだしそうなほど冷えていることに気がついた。
驚いて自分の腕をさする歌仙を見て、青江は卓袱台に饅頭と茶をのせた盆をおくと、すぐに障子戸を開けはなつ。
温かい夏の夜風が、室内の冷気をあっという間に押し流すと、歌仙のがちがちに固まった身体から力がぬけていった。
障子戸の外は、月の明るい真夏の夜。
いつも通り、虫も鳴いている。
「……少し窓を開けたままにしておいて、外の空気を入れるとしよう」
「あぁ」
青江の言葉に素直にうなづき、歌仙はその場で座りなおした。
しばらくして障子を閉めると、室内はむしっとした夏の夜の気温から、過ごしやすい温度に戻っていく。
「まんじゅうを蒸していたから、僕は気持ち良いくらいだったんだけどね」
持ってきたポットを持ち上げ、ガラスの湯飲(ゆの)みへ冷茶をそそぎ入れながら苦笑した青江へ向かって、歌仙は口を開いた。
「青江、信じられないかもしれないけれど、君が来る前に、この部屋には君が居たんだ」
「は?」
青江の動きが止まるが、怪異に慣れた刀剣男士だけあって、茶がガラスの湯飲みからあふれる前に、傾けていたポットを冷静に立てなおした。
「……正確には、君の真似(まね)をして、僕に話しかけていたなにかが居たということかな。……僕はまんまと騙されて、落語の“まんじゅうこわい”について、喋ってしまったよ」
青江は顔を歌仙へ向けがちに、てきぱきと小皿に饅頭をのせ、卓袱台の上を真夜中のティータイムにふさわしくなるように整えながら言った。
「――狸や狐の類(たぐ)いかな?」
歌仙はトランシーバー片手に卓袱台に近づくと、青江とともに饅頭とトランシーバーを乗せた卓袱台を囲む。
「どうだろう。姿を見ていないから、声だけという可能性が高いかな。青江の到着を見計らって居なくなったことを踏まえて考えてみると、目的は僕を怖がらせることだったのかもしれない」
冷茶と、蒸したての白いまんじゅうを見てから、歌仙はふたたび青江へ視線をむけた。
「それは命知らずな怪異だねぇ」
青江が苦笑しながら相づちを打つと、歌仙もつられて苦笑した。
「まったく。せっかく放送しているというのに、後半は完全にただの雑談になってしまった」
怪異もすぎ去り、一人ではなくなった安心感で気の抜けた声を出すと、青江が笑い混じりの声で言う。
「でも、実際に怪奇現象がリアルタイムで放送されるなんて、なかなか無いだろうし、スリリングでいいと思うよ。いつも以上に、リスナー達はぞっとしたんじゃないかな」
「だといいけどね。――あぁ、進行がぐだぐだだ。雅じゃない。元はといえば青江、君が僕のまんじゅうを食べてしまわなければ、こんなことにはならなかったんだ」
「おお、怖い怖い。……歌仙様、こちらのお饅頭と一緒に、どうか怒りをお収めください……」
「まったく、……いただこう」
まだ温かい饅頭をほおばる歌仙のとなりで、青江はトランシーバーに顔をむけた。
「……――ところで……放送を聞いている君は、僕らが本物のにっかり青江と歌仙兼定だと思うかい?」
虫が鳴いている。
「今日はまんじゅうこわいを、歌仙と、僕じゃない青江がお送りしたよ。 皆、素敵な週末を」
それじゃあ、また来週。
放送が終わった本丸に、誰も彼もが疑心暗鬼するように声と息を呑みこんで生まれた、静粛(せいしゅく)とした丑三つ時の闇が満ちていった。