マヨイさんは誘いたい〈1〉お題「いっしょに居ること」
結局また言い出せなかった。
今日も雨が降っている。あの日こそは言えると思った日にすら言えなかったのだ、どうせ今日も自分は言い出せないのだろう。
廊下の床の模様を数えるように視線をぼんやりと向けて、マヨイは足取り重く歩いていた。
天気のせいではないことぐらい、本人も重々承知している。全ては己の意気地のなさが原因であり、天気のせいにすることさえ烏滸がましいと、この瞬間も考えていた。
マヨイが言いたいことはひとつ。同じユニット仲間の白鳥藍良にチョコレートパフェを自分と二人で一緒に食べにいかないか?と誘うことだ。
それがとてつもなくマヨイには難関だった。
確かに、いっしょに居ることは増えていたけれど、自分たちは仕事ありきの関係なのだ。プライベートと考えるとハードルがいきなり跳ね上がってくる。
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