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    まろ💫

    @maromaronlul

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    ほしまほエチュード展示品➂
    ミス晶♂小説。甘々風味。
    頑張りすぎて疲れた晶くんがミスラにハグしてもらうお話。
    ハグの日に書きかけてたやつです。

    ご褒美になって「……うぅ……」
    「何してるんですか、賢者様。そんなところに突っ伏してないで早くこちらに来て」
    「まだ……まだ報告書が何枚も、なんまいも……」
    「唸ってないで早く」
    「うぅ~……やめて、揺らさないでミスラ~!」
    いつの間にか音もなく部屋に入ってきたミスラが、机の上に広がる書類の山に突っ伏す俺の頭をぐりぐりと容赦なく揺らしてくる。書きかけの書類たちが机から落ちていくのを視界の端に入れながらも、それを拾う気力も、ミスラの腕から逃げる力もなくて、せめてもの抵抗で伏せた顔はあげなかった。きっと、みっともなく疲れてやつれた顔をしているから。

    今日はとても長い一日だった。

    早朝からの任務に出かける前、今日の同行メンバーであるスノウとホワイトに気の毒そうにシュガーをふたつ、与えられた。曰く、今日は様々なハプニングが降りかかる厄日となるだろう、と。そして決して外れない双子の予言通り、思い出すとげんなりと溜息が出るくらい、たくさんの小さな不幸が積み重なって襲ってきた大変な一日となった。魔法使いたちのサポートがなければ、今頃フィガロの医務室のベッドで傷だらけで寝込んでいるかもしれない。そう考えると、外傷はなく、体力気力を使い果たしただけの今はまだましなのかもしれないけれど。
    「……はぁ……」
    「何溜息ついてるんですか。ちょっと、晶、きいてます?」
    「きいてます……ミスラ、いい子だから、あとちょっとだけ待ってください……」
    へろへろのふらふらな状態の俺を見て、優しい魔法使いたちこれ以上の厄災に見舞われないよう、早く寝てくださいと俺を自室に押し込んでくれた。俺も最初はもう寝てしまおうと思ったけれど不幸は続くのか、ドサリと自室の本棚から明日が報告期限の大事な書類の束が落ちてきて、顔を青ざめたのが数時間前。やっとその束も残りわずかとなった。
    「そんな状態で仕事ができると思いませんけど」
    ミスラの至極まっとうな言葉にズキリと胸が痛む。けれど、あと少し、あと少しなのだ。
    今ここで誘惑に負けてしまったら絶対に間に合わない。
    ここまで来たら意地だった。何が厄日だ。
    そんなもの、世界にたった一人の賢者である俺にかかれば——

    「仕方ありませんね。ほら」

    「あぁぁ~~!」
    とうとう痺れを切らしたミスラに軽々と持ち上げられ、ぽいとぬいぐるみでも放るかのようにベッドに転がされる。カナリアさんが干してくれたのだろう、ふかふかの布団に包み込まれて顔を埋めたら、もうダメだった。
    身体中の力が抜けて、瞼が下りる。このまま寝てしまえたら気持ちがいいだろうな、と意識を手放そうとしたところで何者かにぎゅむっと低い鼻をつままれて思わず声をあげた。
    「……ぷはっ!ちょっと、ミスラ、息ができないでしょう!」
    「あなたが俺を差し置いて寝ようとしているからです」
    「だからって……鼻はやめてください鼻は。もっと低くなっちゃったらどうするんですか」
    「はぁ。噛り付きにくくなっちゃいますね」
    「齧っちゃだめです!」
    言い合いながらもいつものように身体を起こしてミスラの手を握ってあげるほどの力もなく、うなだれる。そんな俺の様子にミスラは少しだけ戸惑ったように俺の顔を覗いてきた。
    「なんか、変な顔をしていますね、あなた」
    「今日は色々あって……話すと長いんですけど、とにかく気力も体力も全部奪われてしまったんです」
    「ふーん。……どうしたら元気になりますか?逆さまにしてぶら下げてあげましょうか。それか死の湖に連れて行って、水底に落として漂わせてあげましょうか」
    「え!?それはちょっと、ご遠慮したいです……」
    物騒なミスラの言葉に思わず辞退を申し出ると、ミスラは不服そうに眉を寄せている。人間の俺からすれば拷問か嫌がらせのような提案も、ミスラからしたら俺が喜ぶと思ってしてくれたのかもしれない。そんな表情をさせてしまったことが申し訳なくて、力を振り絞ってミスラの手をそっと握る。
    「俺のこと、元気づけようと言ってくれたんですね、ありがとうございます」
    「遠慮されましたけど」
    「う~ん……人間の俺にはちょっとハードな提案だったので……。じゃあ、代わりにひとつ、ミスラにお願いしてもいいですか?」
    「仕方ないですね。まぁ、言ってみてください」
    得意げなミスラの顔が可愛くて、思わず笑みが零れる。
    ミスラへのお願い。
    特に具体的に何かを考えて発した言葉ではなかったので、慌てて考えるけれど、もう身体も心も限界に近いのか、さっきから頭がぼんやりして思考がまとまらない。瞼も限界まで落ちかけているので視界もぶれて、何とかミスラの真っ赤な髪を見つめながら考えた。
    赤い、髪の毛。ふわふわの。猫ちゃんみたいな。
    あぁ、あのふわふわに顔を埋めたら、きっと気持ちがいいだろうな。
    ミスラが魔法で猫になってくれたら、それはもう至極の幸せだろう。

    「ミスラ、(猫ちゃんになってもらって)だきしめて、いいですか?」
    頭の中で、ふわふわの真っ赤な大きな猫を抱きしめて、お腹の匂いを胸いっぱい吸わせてもらう妄想をする。きっと疲れも全部吹っ飛んでしまうだろう。半分眠りに落ちかけて幸せな夢を見る俺は、肝心の言葉が抜け落ちていることに気づかなかった。
    夢心地の俺の言葉に、ミスラは目を瞬かせて、そして少しだけ照れたようにそっぽを向いて手を広げてくれる。
    「……ほら。どうぞ」
    「……?」

    猫ちゃんじゃない。

    そう思ったものの、大好きな恋人が手を広げて待ってくれているのだから、飛び込まないのは失礼だろう。俺はもう八割方眠りに落ちかけていて、いつも持っているはずの羞恥心や遠慮なんて言葉はどこかへ追いやってしまった。

    ぎゅう。

    最後の力を振り絞り、のそのそとミスラに近づいて、崩れるようにその広い腕の中に飛び込む。ぎゅうと抱きしめると、それ以上の力で抱きしめ返されて、ちょっとだけ苦しかった。
    温かくて、柔らかくて、少し固い。
    ミスラのはだけた胸元に顔を寄せて頬を肌にぴったりとくっつけると、ミスラの生きている音が聞こえる。もっと聞きたくて、ぎゅうぎゅうと身体を寄せると、ミスラが笑う気配がする。
    「あなた、意外と甘えたなんですね」
    「……今日はたくさんがんばったから、ごほうびです」
    「俺がごほうび、ですか」
    ミスラはまんざらでもなさそうだ。
    ミスラの音を聞いて満足すると、本当に疲れていた身体が癒されて、少しだけ力が戻った気がする。びっくりして、ミスラに伝えたくて身体を少しだけ起こして顔を近づける。
    「ミスラ、俺、ちょっと元気になりました」
    「俺の力ですね。しょうがないのでもう少し分けてあげます」
    「ありがとうございます、ミスラ」
    ミスラから許可も貰ったし、少し上に上がってずっと狙ていたミスラのふわふわの赤毛を優しく包むように抱き込んだ。そして思いっきり鼻を埋めて吸い込む。

    すぅ————

    「…………」
    「————っぷは!はぁ……いい匂い、いやされます……」
    頭をすりすりと撫でながらうっとりとしてしまう。ミスラは借りてきた猫ちゃんのように固まってしまった。「変態なんですか」といつものミスラの言葉がどこかで聞こえる。
    ミスラを吸って更に少し元気をもらった俺は、たぶんやりすぎたな、と頭の隅っこで思ったものの、ここまで来たらもう止められない。
    ストレスにはハグが一番。30秒のハグで3割のストレスが軽減されると聞いたことがある。今日の俺はたくさん頑張ったんだから、きっとこれくらい許されるはずだ。

    「みすら、もっと、ぎゅってしてください。おれが、ねむっても……」

    「……俺にそんなお願いをできるのは、あなたくらいですよ」
    呆れたように、けれどしっかりと抱き返してくれる腕の強さと温かさが心地よくて、たまには頑張りすぎるのも悪くないかなと、ゆっくりと瞼を閉じた。


    「おやすみなさい、晶」


    それから、頑張りすぎて疲れる度にミスラが抱きしめてくれるから、それをちょっとだけ楽しみにしているなんて、恥ずかしすぎるから。まだ、内緒だ。
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    頑張りすぎて疲れた晶くんがミスラにハグしてもらうお話。
    ハグの日に書きかけてたやつです。
    ご褒美になって「……うぅ……」
    「何してるんですか、賢者様。そんなところに突っ伏してないで早くこちらに来て」
    「まだ……まだ報告書が何枚も、なんまいも……」
    「唸ってないで早く」
    「うぅ~……やめて、揺らさないでミスラ~!」
    いつの間にか音もなく部屋に入ってきたミスラが、机の上に広がる書類の山に突っ伏す俺の頭をぐりぐりと容赦なく揺らしてくる。書きかけの書類たちが机から落ちていくのを視界の端に入れながらも、それを拾う気力も、ミスラの腕から逃げる力もなくて、せめてもの抵抗で伏せた顔はあげなかった。きっと、みっともなく疲れてやつれた顔をしているから。

    今日はとても長い一日だった。

    早朝からの任務に出かける前、今日の同行メンバーであるスノウとホワイトに気の毒そうにシュガーをふたつ、与えられた。曰く、今日は様々なハプニングが降りかかる厄日となるだろう、と。そして決して外れない双子の予言通り、思い出すとげんなりと溜息が出るくらい、たくさんの小さな不幸が積み重なって襲ってきた大変な一日となった。魔法使いたちのサポートがなければ、今頃フィガロの医務室のベッドで傷だらけで寝込んでいるかもしれない。そう考えると、外傷はなく、体力気力を使い果たしただけの今はまだましなのかもしれないけれど。
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