その4「 雪。そして夢枕に立つバデーニ」 ヨレンタは空を見た。
森の木々の隙間から見上げた空には、分厚い雲が立ち込めていた。
フワフワと綿のように落ちる雪は、すぐに数を増やした。
急激に温度が下がる。
「寒い…!」
ヨレンタは、ガチガチと歯を鳴らした。
手袋をしてない剥き出しの手を擦り合わせ、はぁっ と、
息を吹きかける。
目の前にいる馬は寒くないのか、呑気にベリーの茂みを
食べている。
(落ち着け…落ち着け…。)
ヨレンタはパニックになりそうな頭で、必死に考えた。
(森の中を進んだら、絶対に遭難しちゃう……!
水は、低い方に向かって流れる。
小川沿いに進めば、きっと森を抜けられるハズ!)
ヨレンタは、馬にまたがった。
ヨレンタは馬を走らせた。
小川に沿って森を進んだ。
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