対の獅子 小麦の毛並みに鼻を埋め、太陽の香りを肺に入れる。重なり合うように兄さんと団子になりながら毛繕いをするのは、子ライオンたる僕らの日常だった。
顔の毛並みを整えているときにクルクルと心地よさそうに鳴く兄さんが大好きで、僕はつい何回も何回も、丁寧に兄さんの顔の毛を整えてあげるのだ。
――この、例えようのない温かな夢が僕のお気に入り。この夢を見られた日には良いことがあると、子供ながらによく考えていた。
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その日のジェターク寮のラウンジには、巨大なツリーが聳えていた。そのツリーを設置しようと操る作業員の手によってモミの枝が揺れる度、あちらこちらで歓声が上がる。
「ずいぶん立派なものが来たな」
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