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    ニキひい
    絹さんがツイートされていた海賊し〜なさん×ホワリリひ〜ろ+ロイヤルフラッシュンネに触発されて書いたものです。
    元ツイからちょっと設定変えてる&書きたいところだけ書いたのでなんのこっちゃかも
    問題あれば消します……
    最高すぎる元ツイ:
    https://x.com/kinu_tf/status/1967221719132999951?s=46

    ショーダウン!※彼の母国から攫うように連れてきた王子、一彩と海賊であるニキはある国に観光に訪れる。そこは大きなカジノがあり、次期国王である燐音がオーナーも勤めているという。一彩のことをいたく気に入った燐音によってニキはカジノで燐音との一彩を賭けたポーカー勝負を行うことになる。全てのチップを賭けた最終盤でロイヤルフラッシュを出した燐音に対して、それより更に強いこのカジノ独自の役、ファイブカードを出したニキ……というところから始まります。

    ・・・

    「テメェ、ソレはどっから出てきたンだよ」

    綺麗に並べられたエースたちの端に鎮座する道化師が描かれたカードを指し、目の前の男はこちらを睨みつける。先ほどまでのこちらを揶揄うようなにやけ面はどこへやら、一彩によく似た色をした鮮やかな蒼の視線は鋭く、そのまますみませんでした、と飛んで土下座をしたくなるほどだ。抑えろ、こういう場で弱気な姿を見せるのは一番相手を付け上がらせてしまう。荒くれものの中で生活し、船長まで昇りつめた自分は何よりもそれを知っているはずだ。恐ろしいほど頭の切れる男に勝つにはこれを通すしかない。テーブルの下にそっと隠した左手を硬く握りしめ、ニキは慎重に、言葉を選ぶ。

    「んえぇ?どっからも何も、このトランプの中にあったんでしょ?」
    「……イカサマっしょ、無効だ。ジョーカーなんてあるわけが無ェ」

    案の定と言うべきか、燐音はやり直しを要求する。もういちど仕切り直してまた『最強の手札』を作るのだろう。それはここを根城としている彼だからできることだ。ニキが『最強の手札』を崩すチャンスは後にも先にも、この一度きりなのだ。この回をなかったことさせるわけにはいかない。

    「イカサマなんてそんな、外から来た僕らにはムリっす。どうやってやれって言うんすか?」
    「テメェの服にジョーカー隠してンだろうが。賊らしく盗んでよォ?」
    「いやいや、このテーブルにつく前、結構入念に身体検査されたんすけど。怪盗じゃあるまいし、上手く隠したりはできないっすよ」
    「口だけなら何とでも言い訳出来るよなァ」

    余裕の無さそうな表情とは裏腹に一歩も譲る気はないと言わんばかりの言葉の鋭さに圧されそうになる。落ち着け、焦るな。背中の冷たい汗を悟られないよう少し大袈裟に呆れたふりをする。

    「はぁ、どーしてもアンタはこの勝負ナシにしたいらしいっすね……でもそもそもっすよ」

    この島に来てすぐ、ニキたちが燐音とまだ出会う前。確かに二人は見たはずだ。

    「ファイブカードは役としてパンフレットにも看板にも示されてたっす。なのにジョーカーがあるはずない、なんて……変な話もあるんすね?」

    このカジノにおいて、オーナーとのポーカー勝負は、いわば一種のショーだ。負債を抱えまくった哀れなゲストのそれら全てを勝負に勝てばチャラにする、その代わり負けたら大切なモノを奪う。だからこそカジノには賭け事をする客のみならず、そのショーを観に来るだけの者も一定数存在する。賭け事はしないがショーは楽しみたい、という層のためにポーカーの役やオッズについて記したパンフレットと看板が用意されている。負け知らずのオーナーと命知らずのスリリングなポーカー、なんて煽り文句を見ながら、すごいなあと二人して他人事のように呟き笑い合っていたのがたった数時間前のことだなんて、信じられない。
    閑話休題。そしてそのパンフレットと看板の中には確かに書かれていた。最強の手札、ロイヤルフラッシュ。しかしそれを上回る手札がただ一つある。エース四枚とジョーカーを組み合わせたファイブカード、だと。

    「……ッ」

    存在するはずの役を作ることはできないと断言した燐音、それもよりによって「ジョーカー」があるからという理由で。しまった、と意思の強そうな瞳が揺れる。

    「もういいっすよね?アンタのチップもう無くなったし。んじゃ、一彩くんのことは返してもらうっすよ」

    そのまま圧し切って逃げてやろうとニキは立ち上がり、流れるように一彩を自分のもとに引き寄せる。
    呆気に取られたように少し空いている形のいい唇のすぐ横に己の唇を軽く押し当ててみれば、日焼けのしていない頬がピンク色に染まる。宿や船ではもっとすごいことをしているのに。そういうところもたまらなく愛しい。

    「ニキ、さん?」

    賭けに勝った驚きと頬への口づけのどちらに言及すべきか決めあぐねている一彩の思考を遮るように、ニキはいつもと変わらない笑顔を向ける。

    「ん〜……カジノは楽しかったけど、君にこういうのは似合わないっすね」
    「……ニキさんには、似合ってたと思う」
    「んぃ!?それ褒められてないような……まあいいや、僕らの船にさっさと戻るっす」
    「褒めてるつもりなんだけど……ウム、そうだね。帰ろう」

    カジノの出口を目指そうと歩けば、どこか呆然としているゲストたちは慌てて道を開ける。まるで海を割る何かの神話のようだ、と考えながらちらりと燐音を見やると、一彩に向けてであろう伸ばしかけた手を宙に浮かせたまま、ただこちらを眺めていた。賊相手に欲しいものが手に入らずショックを受けているのか、はたまた自身の姿によく似た一彩に何か感じるものがあったのか──ニキには知る由もない。ただどこかその目は生き別れの家族とまた裂かれるかのような悲壮さを感じ、これ以上は踏み込んではいけないとニキは慌てて顔を逸らした。

    ・・・

    その夜、静かな海の上。嵐の日の波のような一日がアドレナリンを生んでしまったのか、疲れを感じてはいても寝付けず船内の見回りをしていたニキは甲板でぼんやりと海を眺める一彩を見つけた。板の軋む音を隠す気もなく近付くも、潮風にふわふわと揺れる赤い髪はこちらを向く様子もない。他人の気配に敏い一彩が反応しないのは、誰が近付いているからかわかっているからこそだ。

    「一彩くん」

    ニキがそれに気付いているとは露知らず、一彩はニキの声に今気づいたという風に振り返る。

    「ニキさん。こんな時間に見回り?」
    「そっすね……ところでここで何してたんすか?」
    「月をね、見ていたんだ」
    「月?でも上は向いてなかったっすよね?」
    「うん、海に映る月を見ていたんだ。今日は波が静かだから綺麗に見えて」

    隣に並びそっと目を伏せる一彩の視線を追ってみれば、波濤の一日を労うように穏やかな波が満月をゆらゆらと揺らしている。航海に支障がないかと海の様子を見ることはあっても、こうして揺れる月をただ眺めることは今までなかった。ただ慈しむように揺れる光を眺めていると心が凪いでいくように感じることができるのは、隣に一彩がいるからだろうか。

    「ところで、今日のポーカー……やっぱりイカサマはしているよね?」
    「……なんでそう思うんすか?」

    あれは冷静に見れば何がおかしいか、火を見るよりも明らかな盤面だった。眠気がやってくるまでの気まぐれにニキは質問に答えず新たな質問を返してみる。

    「使うカードは格スートのカード十三枚が四セットとジョーカーを含め五十三枚、場のカードはロイヤルフラッシュとファイブカード。エースのカードが場に五枚、存在することになるよね?あの人かあなたが何か不正をしていないと成り立たないよ」

    流石はと言うべきか、王子として暮らしていた一彩の観察眼は自らを人質に取られても鈍ることはないようだ。
    一彩の言う通り、エースのカードが場に五枚存在していることがこの盤面ただひとつの違和感だった。そしてニキはファイブカードを出し確実に燐音に勝つため、場のカードをこっそり手元に集めていた。
    しかしこのカジノのルールには、ディーラーがイカサマに関与しないことが定められている。それはディーラーぐるみのイカサマがないことを示すと同時に、プレイヤーのイカサマには口出しをしないことも意味する。プレイヤーがイカサマを証明できて初めてそのゲームを無効にする手続きが行われるのである。
    ニキは確かにイカサマをした。しかし、燐音もまたロイヤルフラッシュを出し確実に負かすため、複数のイカサマをしていた。彼もイカサマを行っていたという事実が、彼自身の隙となったのであろう、と大人しく正答を待つ一彩を眺めながら考える。
    どう答えても目の前の純粋という言葉が似合う男に幻滅されることはないだろうが、ニキもまた海賊の、男の端くれである。はいそうですと大人しく認めるのはちっぽけなプライドが許さない。
    そもそも、このイカサマがバレないこと自体賭けのようなものである。たまには目の前の彼にとってロマンのままで終わらせてもいいのでは、と思い至ったニキは得意げな顔をして一彩に向き直った。

    「一彩くん、いつかの街で見た像のこと覚えてる?」
    「もちろん、勝利の女神像だよね」
    「あれの名前、覚えてる?」
    「えっと確か、ニ──」
    「そっくりな名前の僕には勝利の女神様が味方についてるんす」

    ねっ、と半ば強引に締め一彩の返答を待たず自室へ戻ろうと踵を返す。

    「明日の朝ごはん食べ損ねちゃうから、君も早めに寝るんすよ」
    「待って!」

    甲板が人の体重移動で軋む音がしたと思ったら背中に離れたはずの体温と体重が乗り、潮風にいくら揉まれても取れない百合の香りが緩やかな風に乗って薫る。後ろを向いて顔を見ようとするも、背中に顔を当てられそのままで、などと言われてしまい、なんだか中途半端な姿勢のまま一彩の言葉を待つしかない。
    波の音が何度か流れたのち、波にかき消されてしまいそうな声が微かに聞こえた。

    「あなたが勝利の女神なら、僕は何なんだろうか」

    縋るような声で考えたこともないことを聞かれる。自分が神だなんて思ったことはないし。でもきっと自分と彼の関係を置き換えるならこうじゃないだろうか。心の底、無意識から溢れる言葉は何故かスラスラと口から出る。

    「僕が女神、いや神様ならきっと君は天使っすね」

    だって。

    「天使って神様のものでしょ?」
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    cueveryon

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    ・・・

    「テメェ、ソレはどっから出てきたンだよ」

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