おやすみ(仮)――
「なー、何か手伝えることある? 近侍だし、身の回りのこともしてやんよ」
私が彼らの筆跡に興味津々でいるうちに、タブレットが動かなくなってしまって手持ち無沙汰の豊前が再びもたれかかってきた。今度は体を正面にして、私の胴に逞しい腕を回し、肩に頭を預けながら。
「その前にこの腕は何事なの……」
戸惑う気持ちが強く出たが、それでも優しくぎゅっと引き寄せられるように腕を回されるのは嬉しかったし、そっと手を重ねてみるとたちまち指を絡めて握り返してくれた。間もなく豊前の口から「急に両手が空になって寂しいけ(とぜんなか?)」と呟くような返事を聞いて、私は思わず吹き出してしまった。
「笑うとこかよ」
「ごめん、何か意外でさ!……じゃあいっこ頼んでいいかな。日誌書いたらすぐ寝るからさ、奥の部屋に布団敷いてくれる? 寝具はそこの収納に入ってる」
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