季語シリーズ⑫ 秋近し「今夜は、冷房要らないかなー」
「そうですね。冷たくて心地よい風が吹いています」
昼間は燦燦と太陽が照りつけていたのだけれど、夜になると一転して涼しい風が吹くようになった。息苦しい熱帯夜はどこへやら。今夜は文明の利器なしで朝まで眠れそうだ。
窓を開けたまま、布団を敷いて電気を消し、僕たちは横になった。部屋を閉め切ってエアコンをつけていた時期はその動作音しかしなかったが、今日は違う。通りを行く人の話し声が聞こえてくる。遠くて内容ははっきり聞き取れないが。話し声だけではない。リンリンと鳴く秋の虫、道路を自動車やバイクが走る音、時折風が吹いて木がさわさわと揺れる。
「九郎先生、まだ起きてるー?」
「ええ。眠気は来ていますが……」
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