最初で最後の我儘を兄と一つ屋根の下、一緒に暮らせたらなんて幸せだろう。ずっとそう願っていた。しかしそれは結局、私のわがままに過ぎななった。
家族皆で過ごすというのはあくまで私が想像できた範囲での幸福でしかなかった。よくよく考えれば兄と私は母親が違う。それがどうしてみんな仲良くできようか。そんなことも理解できないほど、私は未熟で幼稚だった。
詰まるところ、兄に幸せであって欲しいというのが、私の願いだった。
眩しい太陽の光。小鳥のさえずり。感じるのは懐かしい土の匂いではなく、消毒液の鋭い香りだった。ゆっくりと瞼を上げると視界には人工的な薄暗い壁が写っている。目を下にやると真っ白なシーツが見えた。
部屋が纏う雰囲気は、重く苦しいものだった。
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