小さな嘘 風呂に入って神様達へのお供えをして。
さて寝るか、と主寝室に入ると『先に寝る』と言っていたフェルがまだ起きていた。
「まだ起きてるなんて珍しいな。眠れないのか?」
そうフェルに話しかけると、じっと俺を見つめながらタシタシと自分の布団を叩いた。ここに来いってことか?
よく分からないがフェルに指定された場所に座ると、突然前足で引き寄せられすっぽりフェルの両足に収まった。一瞬の出来事に戸惑っていると俺たちの周りが淡い光で包まれ、フェルと二人きりの空間になった。
「フェル?」
『我ほどの力があれば、お主の自由を奪って人里から離れた場所に閉じ込めておくなど造作もない』
「まぁ、うん。そうだな」
『だが、お主はそれを良しとしないだろ』
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