【戦を終えて・前編】——かくして神竜軍は巨悪を討ち倒し、世界に平和が訪れた。
とはいえ御伽噺のようにこれにて一件落着というわけにはいかない。特に各地を統べる王族たちにとってはむしろこれからが正念場だ。彼らには各々の国で果たすべき其々の使命がある。
ブロディアの第一王子・ディアマンドに直に仕える王城兵、アンバー。彼もまた神竜軍にて仲間と共に戦った一人だ。
普段は笑顔を絶やさないほどに朗らかな彼だったが、今はいつになく真剣な顔をしていた。
「アンバー。今の話、聞いていた?」
落ち着いた、透き通るような、そして耳慣れた女性の声。
同僚のジェーデがいつもの無表情で彼の顔を覗き込んでいた。
「あ、ああ、大丈夫だ。当然俺も同行するぜ」
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