呪いと祝福〜後日談〜アメリゴと敬虔な信徒であるリリィがいるところにヴェリタが赴く。
「アメリゴ、君はまた新大陸に調査に行くんだろう?それが真実であると確証を得るために」
「そうだな」
「僕もそれについて行きたいんだ」
「君も真実を探究したいということかな?」
「あぁ、新大陸にはまだ見ぬ未知が眠っている。それに、インドの奥地には黄金の国、ジパングがあると言われている。世界は丸いんだ。新大陸の更に奥地に行けばジパングに繋がるはず。僕はこの目でそれを見てみたいんだ」
「だからその道中、新大陸に行くことになるなら、僕も行きたいなと思って」
「なるほど。確かに今回の航海で新大陸までの航路は私の測定では完璧だ。そこまでの航路は安全に行けることだろう。だから君が言う更にその奥地というのも、もしかしたらこれからの航海、君と共になら行けるかもしれないな」
「ありがとう。あ〜そのついでと言うのもなんだが……リリィ、アメリゴ。その、僕にも、文字というものを教えてくれないかな」
「僕には文章というものが読めない。文字も書けない」
「クリストファーは世間から真実を受け入れられなくて人間不信になっていた。自分がいなくなれば真実を知るものがいなくなって、なかったものになる。それは真の発見と言えるだろうか……そうじゃない。僕は今まで直感で生きてきた。でもその直感だけでは皆は僕を信用してくれない。そう、理論的に物事を考えて、相手に伝わりやすいように伝えることが真実を知ってもらうためには必要なんだ。だから旅の道中、君たち二人に僕に知識を、文字の書き方、文章を教えてほしいんだ」
「もちろんです。文字の書き方なら教会で子どもたちに教えていました。任せてください」
「まぁ、確かに。航海に出るなら、測量を手伝ってくれるというなら、文字が書けないことには何も始まらない。リリィに文字を教えてもらい、私の手伝いもしてもらおう」
「リリィ、アメリゴ……ありがとう。文字を書いて、皆に広める。後世に広げる。真実を知ってもらう。世界の真理を見て、皆に知ってもらうためには、この第一歩が大事なんだ……共に、世界の真理を見に行こう!」
「あぁ、そうだな」
「よろしくお願いします」
「……ショルメ。今君の瞳は、君が私に言ったように、とても輝いて綺麗だと思うぞ」
「フフ、本当かい?」
「ああ」
「はじめて言われたよ」
「そうなのか?」
「そっか……眩しかったのは僕だけじゃなかったんだ……みんなみんな、僕も、皆も輝いていたんだ」
2XXX年
ある探偵事務所にて。新聞の小さな記事を熱心に見つめる青い瞳の男がいた。
『新世界?金塊海底で発見』
某日、サルガッソ海の海底にて鋼鉄の箱が発見された。その中には黄金の他、16世紀に書かれたと思われる文書が見つかった。文書は日誌もしくは日記を綴った内容であったが、真実というには現実離れしており、物語というにはリアリティのあるものばかりであった。真相については、専門家たちが慎重に分析を進めていく予定。文書の最後は以下のような文言で締めくくられていた。
『親愛なる相棒へ
シンセカイに溺れし君に捧ぐ』