唾と地獄を飲み込みて 空を、肉を、骨を、鋒で断つ度に、背筋に行き過ぎた興奮が走る。肉体が歓喜に震え、その悦びを他人に知ってもらいたくて喉を震わせれば、獣の咆哮が街に響いた。
刀は単純明快だ。振るえば地獄が一つ、二の太刀で二つ、三の太刀で地獄に落ちたくない人間が逃げ惑う。
粗野であれど卑に非ずいう気高い志など、海動剣は端から持ち合わせていない。
剣は世界の輪廓と己の魂の輪郭を感じ取れる刀を心底愛していた。
だからこそ、距離を取って引鉄に指をかけて命を奪おうとする拳銃使いを心底理解できなかった。
地獄絵図を描く責任を持とうともしない腑抜けども。
地獄が残らないほど極悪の限りを尽くすところまでが、自らが作り出した地獄の沙汰への責任の取り方だ。
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