雨とあなたぽつり、ぽつりと。
ひやりとした水滴が頭を叩く。
「……雨だ」
まさか買い出しの帰りに通り雨に襲われるとは。
悲しいかな手元に傘は、無い。
オレは忙しない足取りで近くに生えてる木の下に避難をした。
多少は濡れるだろうが、全身ずぶ濡れで帰るよりかはマシだと思いたい。
「早く止めばいいんだけど」
雨粒のようにぽつりと恨み言が零れたが、オレは雨が好きだ。
買い出しの道中で濡れ、洗濯物の乾きが遅く、玄関先が水浸しになり…と家司としては仕事が滞る事ばかりだが、個人的には嫌いじゃない。
雨が好きだ。
あの人を、思い出すから。
つぅっと滴が頬を伝う。
少し冷たいその一撫ではまるで彼に触れられたかのよう。
一定のリズムで頭を叩く雨粒は彼に撫でられた時を彷彿とさせる。
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