優しい夜の編み方「バロックさん、来てくれたんですね!」
店の扉を開け開口一番に聞こえてきたのは短髪のあどけなさの残る青年の声だった。
青年……成歩堂龍ノ介はやってきた私を嬉嬉として奥の個室に誘導すると荷物を入れるカゴを取り戻し、私が荷物を入れ終わるのを見つめていた。
徐々に落とされる照明の中、私は寝台に横になると瞼を閉じる。
「今日もぐっすり眠れるようにサポートしますね」
そう言って耳に入って来たのは龍ノ介の柔らかく吐息混じりの声だった。
……何故、私がこの店を訪れるようになったのか。それは1ヶ月前に遡る。
night1
「バンジークスさん、お久しぶりですね。」
そう言って私は目の前の席に促されると担当心理士と挨拶を交わした。
診察終了後、いつものカウンセリングを受ける事となっていた私は予約表を机の上に置くと会話の続きを待つ。
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