街の灯りを見に行かないかとノヴァがロン・ベルクに申し出たのは昨晩のことであった。ロン・ベルクには何故この青年が自分を誘うのか理解ができず、答えに窮した。少し考えさせてくれ、と返事を寄越しながら窓の外に視線をやる。窓に映ったノヴァがどのような顔をしていたのか、知ることは容易であったが、ロン・ベルクにはそれが出来なかった。想像することもまた容易であったからである。
街を灯りで彩る祭が生まれたのは数年前のこと。ノヴァがロン・ベルクの弟子になった年に、この祭はつくられた。当初は有志が手を挙げて行っていたものが、今では国を挙げての行事へと変貌した。ここだけではなく、各所で捧げられる灯りは生者の祈りそのものである。
2145