『護衛ごっこ』「ボク、今日はパン屋さんまで行くんです!」
朝、空がまだ青く澄んでいる時間。
そう言ったヴァロの隣で、ナターリアは伸びをしてから、にんまり笑った。
「ふーん? じゃあボクが、護衛してあげるよ♪」
「えへへっ、やった〜! 一緒に行ってくれるんですね!」
ヴァロは満面の笑み。
ナターリアはヴァロの肩に手を置いて、ちょこちょこ歩く彼にぴったりついていく。
それを見た通りすがりの兵士が「お、今日は護衛ごっこか?」と笑うと、
「ちがいますよ〜!今日は、おつかいの日なんです!」
と、ヴァロが元気に返していた。
(……ほんと、弟に似てるなあ)
赤い瞳を細めながら、ナターリアは少しだけ顔をゆるめる。
ヴァロの歩幅に合わせて歩くのは、少し物足りない。でも今は、それでいい。
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