「あいつは自分勝手だ」
そう真子とローズに告げると、二人は訝しげな表情を浮かべて反論してきた。
「何言うてんねん。あーんな上司思いの子なかなかおらんやろ」
「そうだよ。それにイズルや雛森ちゃんといった後輩のこともよく見てる、思慮深い子じゃないか」
「それはそうなんだけどよ」
確かにそうなのだ。二人が言うことにも頷ける。
あいつは他隊の副隊長と比べてもかなり優秀だと贔屓目なしに思う。部下である隊士たちの様子もよく気にかけているし、瀞霊廷通信の編集業務もよくやってくれている。それは分かるのだが。
「……あいつは俺に懸想しているらしい」
「まぁ、憧れが形を変えるなんてことはよくあるよね」
「で、拳西はそれに応えてやったんか」
「いや、それが応えてほしいどころか、返事すらいらないらしい」
「なんやねんそれ」
呆れたようにぼやく真子に、あの時の俺もそんな顔をしていたんだろうなと思う。
『俺は六車隊長をお慕いしています』
『憧れや尊敬だけではなく、恋慕の情も込みです』
『でも、隊長に応えていただきたいわけではありません』
『ただ隊長のことをそう想っているヤツが、この世にいるのだということを知っていてほしいんです』
「言うだけ言って返事はいらないし聞かないだなんて、自分勝手以外のなにもんでもねぇだろ」