拳修小ネタ六車隊長が現世での虚討伐任務中に負傷したという知らせが入った。頭を強く打ったようで意識不明の重体であるらしい。長年の付き合いがある隊長と五番隊の平子隊長が、心配だからお見舞いに行くと言うので、僕と雛森くんも一緒について行くことにした。
でも正直、僕らが心配したのは六車隊長ではなく檜佐木先輩だった。どんな形であれ、上司、慕った人を失う怖さを僕らは知っている。そうでなくとも、あの人は「失いすぎている」から、誰かが傍に寄り添ってあげないと今度こそ壊れてしまうのではないか。
(お願いですから、もう檜佐木先輩を独りにしないであげてください。六車隊長……)
そう願わずにはいられなかった。
なのに。
「拳西が記憶喪失になってるぅ?」
「しかも修兵くんだけって……」
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「虎徹隊長。記憶のことはさておいて、六車隊長が退院されるのにどれぐらいかかる?」
「……改めて精密検査をするとして、三日ぐらいでしょうか」
「分かった」
そう返事をした修兵は私の方に振り返った。何かを決意したような顔の修兵に、これは良くない方向に進みそうだと直感した。
「修へ、」
「白さん、お願いがあります」
慌てて止めなきゃと思った私の呼びかけを遮って、修兵が名前を呼ぶ。
ねぇ、なんで。そんな呼び方、最近じゃしなくなってたじゃん。ねぇ、いつもみたいにタメ口で話してよ。
「イヤだ」
胸騒ぎがして、お願いをしてくる修兵を拒否する。
「そんな事言わないでくださいよ」
まるで聞きわけのない子を見守るように優しく苦笑する修兵は、絶対に碌でもないこと考えてるに違いなかった。
「白さんには副隊長として、六車隊長を支えていただきたいんです」
「!!む、無理だよ」
「白さんは元々副隊長でしたし大丈夫ですよ。それに俺ですら務められたんですから」
「違う!!そうじゃなくて!!」
ねぇ、私の話聞いてよ。拳西のことだって、独りで決めちゃわないで。それに、それに。
「修兵は拳西の傍にいなきゃ……!!」
「……久南」
修兵が一呼吸置いて、真っ直ぐこちらを見据えた。
「今の六車隊長を支えられるのは貴方だけなんです」
だから、お願いします。
そう続けた修兵は、もうこっちを見ていなかった。
京楽総隊長の元へ報告してくると言って、勇音ちんに一礼して四番隊隊舎を去っていってしまった。
「久南さん……」
「どうにかして拳西の記憶を戻すよ!!だから協力して!!」
「もちろんです!!」