周防要にとって、特別営業課はこの上ない職場であった。忌まわしいΩの体質も、5課という環境下、そして自分の対人操作能力をもってすれば長所に変わる。この地下五階のホールでの業務もそうだ。血しぶきが激しく上がるギャンブル、そして敗者にほぼ確実といっていいほどの頻度で下されるショーのホストは、自身の嗜虐欲を満たした。
このホールでの催しは、ギャンブラーの質を問わずVIPに高い人気を誇るが、ホール全体に血なまぐささが残るのが欠点だった。清掃作業に入る時間で多めにもらえる貢献値という利点は相殺される。これさえなければ最高なのにな、とひとりごちていると業務連絡の入る端末が震えた。
「?」
それは予定されていた清掃終了時間の変更通知だった。特四に頼んだ発注業務が誤って行われた手違いで、汚れたカーペットの替えが来るのが遅れるらしい。
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