5. ようこそ俺の世界へ 大いなる厄災の影響か、はたまた怪我の後遺症か。右手の感覚が無くなったのは事実だ。腹に穴が空いた事を思えばこの程度で済んだのならまだマシなのかもしれない。
「皆に話しましょう」
「このくらい言わなくていいよ」
「何かあった時では遅いんです」
「……じゃあ、まずは先生に言わせてくんね?」
恐らく、ファウストは気付いているだろう。だけど自分の口から聞くまでは触れてこない。そういう人だ。だから今後の事を考えるなら真っ先に相談すべき相手だと思っている。
「……それで、話と言うのは」
賢者さんに呼ばれ入れ替わりに部屋へやってきたファウストは、眼鏡の鼻にかかる部分──ブリッジと言うらしいそれを指で押し上げながら俯きがちにこちらへ問いかけた。
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