たからもの ひらり、ふわり。
それは賑やかな璃月港をゆったりと歩くときだったり、旅人に請われて出かけた先で槍を振るう時だったり。彼が動くたびに舞うように数多の動きを見せるのは、毛先にいくほど元素の黄金が溶けこんだ色に変化する絹糸のような髪。
ゆらり、ぱさり。
常に結われていて一本の尾のように舞う昼間とは違う動きを見せるのは秘めた夜で、幾筋もの波をシーツに描くのを見られるのは俺だけの特権だ。そのことに俺がとてつもない高揚感と優越感に満たされているのを知ってか知らずか、彼は髪飾りを外し髪を解く役目を俺に委ねるようになった。
彼とともに過ごすようになり、いつしか隣にいないときにも時折ひらりと動くものにふと目をやることが多くなったのを自覚していた。
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