「恭二!行こう!」
次の撮影に向かうため、そう言って恭二の腕に自分の腕を、する、と絡ませる。恭二は何も言わない。視線を感じて後ろを振り返ると、みのりが目だけでボクを窘めた。ちら、と気付かれないように見上げれば、恭二の赤い頬が見えた。またやってしまった。
恭二がボクのことを好きなのは、すぐに気が付いた。きっと本人は知らないけれど、恭二はとてもわかりやすい。ボクのスキンシップに緊張する体も、ボクを見つめる優しい瞳も、他の人には向けられないもので、心がふわふわした。きっと、嬉しかった、んだと思う。ボクは、そんなボクたちをみのりがじっと見てることもわかっていた。でも、何か言われるまでは知らないふりをしようと、今まで通り振る舞うことにした。でも、それもある日みのりと二人きりになるまでだった。
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