「五条さん、少し時間をいただいて良いですか」
高専に戻るなり、どうやら自分を待っていたらしい七海に声をかけられて、五条はおやと目を瞠った。
可愛いこの後輩はどうやら自分を苦手に思っているようで、よほどのことがない限り自分から声をかけてくることはない。水くさいなあとは思うが、こちらから声をかければ律儀にやってくるので、嫌われてはいないと思う。もっと積極的にコミュニケーションをとる必要があるのかもしれないな、とも思っている。当の七海にしてみれば、ありがた迷惑だろう。
ともかく、そんな後輩がわざわざ自分から声をかけてきたということは、それなりに大事な話があるということだ。
「いいよ~。どこで話す?」
七海が指定したのは、校内の片隅にある自販機が置いてある休憩スペースだった。人にあまり聞かれたくない話なのだな、とそれで判断する。
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