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    Roll_sno

    @Roll_sno

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    Roll_sno

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    官ナギで、ランドセル背負ったナギさんにえっちなことをしようと思ったんですけれど、何か、そこまで辿り着きませんでしたね。えへへ。

    似合わない女装に近い栄養素が含まれる話。こんな滑稽な姿があるだろうか。

    頭のトチ狂った男を除いて血色も目付きも悪いと評判の顔の上にぽすりと乗った帽子は不釣り合いに真っ黄色、天使のはねだなんだとCMで見た黒い鞄は仮にも成人男性の肩幅に対応しきれずぎちぎちと引きちぎれそうに、胸元をぱたぱたと風に揺れる名札には絶妙な崩れ具合でつじたなぎりと平仮名で明記され。とどのつまり、小学生のコスプレをする羽目になっている。

    騒音が人の形を取ったような男から押しに押されて同居に至り、口説きに口説かれ恋人に発展して、ついでに辻バレも起こして始まった新生活は環境を考慮しての情状酌量だかで新横浜らしく生温かい。これといった咎もなく始めた退治人見習いとしての仕事では、いやしかしこれこそが咎なのではないかという程のイカれポンチな町らしいアレコレに巻き込まれながら、どうにか戦力としてやっていけている、のではないだろうか。今日も今日とて路地裏住まいの頃から何かとやかましいガキどもをあしらいつつ、家に送り届けがてらのパトロールの最中にそいつは現れた。

    「俺は吸血鬼・学生時代のノスタルジー!!」

    また、わけのわからない。とはいえそこかしこの人間に光線を放ち服装ごと小学生へと変えていくこのポンチを放置するわけにもいかず、奴を追いかけて来ていたのか駆けつけた退治人たちと共に殴り倒したわけである。小学生に変えるわけだから、ガキどもに注意を払う必要がなかったのは幸いと言えた。が、最後の最後に放った光線が野次馬か逃げ遅れか、見知らぬ女に当たりそうだったところを庇ってしまったので結局、意味はなかったか。結果が、冒頭のありさまである。

    せめて身体か精神のどっちかが幼くなってくれればよかったものを、気絶直前に放った光線の微妙なかかり具合では衣服を変えるのがいっぱいいっぱいであったらしく、それなら諦めて変えないでいて欲しかったが、どう足掻いても取れない帽子とランドセルと名札の3点セットを付けただけの俺がそこに残ったわけだ。まったくふざけている。案の定、退治人連中とガキどもには同情からか抑えようとしても抑えきれない笑いが巻き起こり、2日程度で戻るだろうというクソ犬仮面の診察結果を手にいつもより早めに帰宅。諦め切ってその格好のままに台所に立っていれば俺を見るなりカンタロウは膝から崩れ落ち、ほらみたことかとため息を吐いて顔を覗き込もうと近付けば後ろに飛び退いて何やら言うに。

    「いや、その、本官!そのような性癖があるわけではなく!!しかしながら、辻田さんがそのような幼なげな装いをするのは、こう、ギャップと言いましょうか!」
    「何が言いたい」
    「興奮しました!!!!」
    「うるさい!やっぱり言うな!!」

    こいつは、本当に碌なことを言わない。冷めた目線を向けられるよりはよっぽど良かったが、お世辞にも小柄とは言えない男のランドセル姿に興奮したなどと、こうも頭がどうかしてると救いようがないな。

    「仮にも警官だろ、お前は」
    「ほ、本官はランドセル姿の辻田さんに興奮したのであって!小学生に興奮するような性癖は!決して!!」
    「……まあ、いい。2日ほどこのままらしいから、お前も何となく見慣れろ」
    「エッ、脱げないのでありますか!」
    「脱げない上に、切っても直るらしい。試したお陰で服の背中がズタズタだ」

    ちょっと、悪戯心というか、そういうのが無かったわけでもないが、ぺたりと無様に尻もちをついた男の手を引いて破れた布を確認させたのは迂闊だったか。2つ3つ妙な呻き声を上げたかと思えば片膝をついた俺の首をもう片手で少し下げ、その高さに合わせるようにしっかりと上体を起こしてキスをしてきた。こいつの、カンタロウのキスは比較のしようが無いが恐らく少しばかりねちっこくて、軽く唇を触れ合わせるのを数回、甘噛みと舌先の動きを織り交ぜてその触れ合う時間がゆっくりと長くなっていき、こっちが口を開く頃にはお互い発情してるような、そういうキス。べしゃべしゃになった口周りに全く頓着せず、開いた口の先で蠢く舌はさんざ弄るなと良い含めた上の歯列の他はもう好き勝手だ。上顎の浮き出たところをさりさりと舐め回しては下の歯列を端から端までなぞったり、舌を引き摺り出しては擦り合わせて吸い上げてと蹂躙が心地よく、破れたところから差し入れられた無骨な手に撫でられる背がびくびくと、血を失った獲物のように震えることに自分でも気付いていた。

    「ぉう……ン…、はぅ………」
    「はぁ……辻田さん、きもちいでありますか?」

    馬鹿か、こいつは。俺が、お前の前なら理性は手放して問題のないものだと理解して、お前の寄越すものを素直に受け入れるのにどれだけ我慢を重ねたか、知りもしないんだろう。こうして与えられるものに抵抗せず、頭がぼやけるのをまあいいかと流してしまってはきっと、今までの環境では生きていけなかった。それを、それを。

    どう答えるにも癪で、興奮に兆す股座のそれをそいつの腹に擦り付けることで答えとする。案の定、血をぐるぐると巡らせた馬鹿はのぼせ上がった顔で俺を押し倒し、背中は床につく前にガチャガチャと音を立てて何かに遮られ、と、ここで俺はようやく自分がどんな格好をしているかを思い出してただ焦った。

    「、っ待て!今日は流石に……んぅ……」

    車と馬鹿は急に止まれない。それが頭のイかれた台風男ならなおのこと。強引にも深くなっていくキスに、引くんだか上っていくんだかわからなかった血の気がぐいぐいと上っていく方に傾いていく俺も俺だが、そのうち見た目の滑稽さどうこうよりも体勢の辛さが気になるようになってきた。ガキどもに背負わせるにはなるほど、納得のクッション性と厚みを持つランドセルはしかし、仰向けの状態で背負い続けるのは首がしんどく、キスに没頭しきれないのが腹立たしい。こうしてしなくてよかった発見を、してしまった以上はどうにかしたいところ。マウントを取られた状態といえど最近は食事も摂れているし、押し除けられないわけでもなく。

    「んがッ……どうされました辻田さん!もしや、本官また何かやっちゃったでありますか!!」
    「首が、辛い」
    「あ、ああ!そうでありますよね!!」

    自分を横に退かしてから立ち上がる俺に今日は何もしないとでも思ったのだろうか、股間の布地を押し上げて仰向けのままに見上げてくる姿は、まあ正直いまは俺も人のことを言えた義理ではないが滑稽で。仕方なく、何もわかってないこいつにもう少しわかりやすく言ってやろうと思った。

    「今日の、夕飯は」

    ぅ、と小さく呻いたのは、料理の手を止めさせてコトに雪崩れ込もうとしたとでも思っているんだろう。実際のところ火は止めてあるし、後で温めれば問題はないぐらいのところまで出来ている。

    「早く帰ったから割と手の込んだものを作っていたんだが」

    ゆっくり、キッチンから遠ざかっていけば聞こえる衣擦れの音はきっと、期待に身体を起こしているからに違いない。いっそ、それ以外なら許さないぐらいの気持ちだ。

    「後で、いいな?」

    言いながら寝室の戸を開ければ大変に良いお返事が聞こえてきたので、伝えることは伝わったんだろう。あとはもう、知るか。一足先にベッドに横向きに寝転がって、リビングからの逆光を背負う嵐を待っている。
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