紅に染む 薄闇の中、微かな月光が窓辺を照らしていた。三島一八はベッドの縁に腰掛け、片手で顔を覆っている。肩を上下させる息遣いが荒い。風間準は、静かに彼の前に膝をついた。
「また、ですか」
小さな声だったが、確信を持った口調だった。一八は応えず、手のひらの奥で鋭く息を吐く。
「何も言わないつもり?」
彼女の声には怒りはない。ただ、僅かに滲む寂しさが、一八の胸を締め付ける。
「……言ったところで、変わるわけではなかろう」
「それでも」
準の指先が、一八の手の甲にそっと触れた。温もりが、火照った皮膚にじんわりと広がる。
「あなたが今、何を感じているのか、聞かせてほしい」
一八はゆっくり顔を上げた。夜の闇がその瞳に宿っている。光を飲み込んだかのように深い、赤黒い眼差し。
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