デートの約束ならドアの中で 1.5話「すみません。これ、デルウハ殿ですよね」
同僚から差し出されたスマートフォン。フロントガラス越しに車内の様子が映されている。運転席にいるのはまごうこと無く自分の姿だ。隣にいる人間、と、画面の隅に見切れている派手な看板。こうなるのが嫌だったんだ、と天を仰ぎたくなる気持ちを抑え、顔色を変えずに肯定する。
「そうですけど、何か?」
デバガメのつもりだろうか。しらを切ればどうにかできやしないだろうか。上司とラブホテルの駐車場から出てきた瞬間を切り取った写真など。先週の中日、会社帰りに発生した不慮の事故だとしか説明ができないが、画像化された生々しさを目にして血の気が引く。
分かりきった回答のはずなのに、肯定すれば目の前の口がひくりと震えた。次いで聞こえた言葉に耳を疑う。
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