「放浪者が、出かけたー⁉」
「あら、随分驚くのね。パイモン。この世界ではもう、彼の罪は『存在していない』のよ。知っているのは私たちだけ。なら、彼が自由に出歩くのも不思議じゃないでしょう?」
当然のことのようにナヒーダは返す。
そこに対しパイモンはまだ不安が残っているようで、納得がいかない表情をしていた。
「記憶を取り戻して早速自由にしたら、何しでかすか分からないだろ?」
などと言葉をこぼすパイモンに対し、ナヒーダはくすりと笑った.
「ふふ、心配性なのね。でも、今日は嘘と本当が交わる日。このことを伝えたから、彼は出かけたのだと思うの」
『嘘』と『本当』つまり、エイプリルフールだ。
そんな日だから出かけた、と言うのはパイモンにはしっくりこなかったようだ。
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