状況を整理しよう。
サザントスさんに寝室に来るよう言われて、来たらいきなりベットに押し倒されて、……?
「え、あの、サザントスさん?」
「……」
返事がない。
「え、えっとサザントスさん……?」
もう一度話しかけると、ようやく反応してくれた。
「……………………なんだ」
「あの、えっと、なにしてるんですか?」
「見ての通りだが」
見て分からないから聞いているんですが……。
僕の上に覆い被さるようにして乗っかっているサザントスさんは、いつもと変わらず無表情だ。何を考えているのか全くわからない。
「……ロンドよ」
「はい!?」
唐突に名前を呼ばれて思わず声が裏返ってしまった。
そんな僕のことは気にせず、サザントスさんは続ける。
「ここから、どうすればいい?」
「……はい?」
予想外の言葉に思考が停止する。……どうすればいい、とは?
サザントスさんの言っていることが理解できず固まっていると、痺れを切らしたのかサザントスさんが顔を近づけてきた。
反射的に目を瞑り、身構えてしまう。しかし予想していた感触はなく、代わりに耳元で囁くような小さな声が聞こえた。
「お前はいつも私にしてくれるだろう。だから今日は私がする番だと、そう思ったんだ」
今日は私がする番。私?私って、誰だ……? サザントス、さんが、僕に?
「ど、どういう……ことですか」
混乱している僕を見て、察しの悪い奴だな、というように少し呆れを含んだ声で言われた。
「こういうことだ」
その言葉と同時に唇に触れる柔らかいもの。それが何なのかすぐに分かった僕は、驚きのあまり目を見開いた。
至近距離にあるサザントスさんの顔。閉じられた瞼からは長いまつ毛が見え、薄く色付いた頬や唇が目に映る。
キスされたのだ。それも初めてサザントスさんの方から。
突然の出来事に頭がついていかない。何か言わなければと思うのだが、口を開くことができなかった。
時間にしたらほんの数秒だったかもしれないが、僕にとっては永遠のように長く感じる時間が流れた後、ゆっくりとサザントスさんの顔が離れていく。
「……ロンド」
いつもより熱を帯びた瞳に見つめられる。
「どうすれば、いい?どうすればお前を満足させられる?……教えてくれないか」
―――この人は一体どこまで僕を溺れさせれば気が済むんだろうか。
もう我慢なんてできなかった。
気が付いた時にはサザントスさんの体を強く抱きしめていた。そのまま勢いに任せて、今度は僕がサザントスさんを押し倒した。