シュガーナイフとビターバレット②少女……ブラムはその日、不思議な夢を見た。
「……あ?なんだここ?」
気づけば、夜の街の中にいた。
それも、普段から慣れ親しんでいる街の姿じゃない。どことなく古いレンガ作りの建物の数々に、川や橋があり、遠くでは大きな時計塔が見える。そして、夜だからか白い霧がたちのぼってモヤがかかっている。
そこは、テレビでよく見るロンドンのような街並みと瓜二つだ。だが、自分が住んでいるのはアメリカのはずだ。まさか、一瞬でアメリカからイギリスまでテレポートしたなんて馬鹿げた話があるとでもいうのか。
それになんとも不気味なことに、自分以外に人の気配が全くしない。たとえ夜だとしても少しは人の気配があるものなのだが、どの建物にも街灯にも灯りはついておらず、人の声ひとつもせず、ただただ静寂と暗闇のみが支配している。
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