「誰の煙草の匂いが好きなの」
ショット3杯と他にも少々、酒を入れてのホテルまでの帰り道。
バーまで着いてきてショット対決を勝手に申し込んだかと思えば、ひとり酔っ払い潰れたこいつに肩を貸しながら歩いた。
ホテルは今回それぞれで部屋を取ってる。
とりあえずこいつを部屋まで介抱してベッドへ寝かせる。ついでに煙草も元通りに。
その後については知ったこっちゃない。
いつもの事だ。
バーで誰かひっかけようと思ってたが仕方ない。
もう一度それらしい場所へ出かけて……と考えた所で、少し視界がぐらついた。
当然か。俺もそこそこ酒入ったしな。
大人しく部屋に戻ってベッドに横になる。
『売り、行かないの?』
話しかけられて意識が浮上する。
『俺の言ったこと聞いてくれたの?』
飲みすぎたから止めただけだ。
『ふぅん、ま、行かないでくれたなら別にいいけど』
『ねぇ』
『俺のセブンスターの匂い好き?』
しつけぇな。
『煙草、勝手に戻したんだからそういう事でしょ?』
甘いとか文句言ってただろうが。
『ミルちゃんがそうしたいんでしょ?』
『それともセブンスター吸ってりゃ誰でもいいの?』
そもそも相手構わず身体売ってんだ、関係ない。
『そ。じゃあ客がセブンスター吸ってたら嬉しい?』
いや。
『性癖って言ってたのに?』
『だからやっぱり俺なんでしょ?』
『ねぇ』
パチリ。
目が覚める。
ホテルのベッドの上。
夢見が悪いのはいつもだが、今回はそれとは違ったような。
少し汗ばんでる。
シャワーでも浴びてくるか。
昨日の酒がまだ残ってんのかもな。