nobody knows大通りから少しはずれた場所に、そのバーはあった。外から目立ちにくい場所にある階段を登って2階、間接照明が適度に灯を灯す小洒落たその場所のカウンターの奥に二十代くらいの男女が座っていた。そこに、銀髪を靡かせた黒服の大男が足音を立てずに近づく。カウンター内のバーテンダーは大男をチラッと見てまたすぐ目を伏せた。ここがただのバーではないことはバーテンダーの態度からもお分かりのことだろう。
カウンターの奥に座ってパソコンを覗き込んでいたコーンロウの若い男は近寄ってきた銀髪の男に気づいて僅かに頬をぴくりと動かした。手前に座っていた女も顔を上げる。
「待ってたわ、ジン」
「おいキール、なんでジンをここに呼んだんだ?元々この作戦に入ってないだろう?」
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