抱きしめて「食満先輩、無理をしてませんか」
そんな中、中庭で用具の修補の仕事を行なっている留三郎を見かけて、母屋の廊下で思わず立ち止まっていた俺に声をかけたのは、鉢屋三郎だった。
「わかるのか、鉢屋」
「いやー、伊作先輩が帰ってきてないことを知った上で複合的に見ると、少しぎこちなく見える、程度としか。俺は変装するために人の動きとか癖だとかをよく見てるから気がつくだけで、他の五年は全く分かっていないでしょうよ」
あの人、こんなに嘘つきだったんですね。と鉢屋は言って、俺と揃って留三郎に視線を向ける。
「……ねぇ、気が付いていますか。潮江先輩」
「何がだ」
「いやねえ、食満先輩の話題を振ったら気がつくんじゃないかとそう思って話しかけたんですけど」
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