精霊祭年に一度の大祭へ残すところ1ヶ月を切り、街全体が準備に向けてにわかに慌ただしくなっている頃。宿屋の店主は祭り中の食材等の仕入れのために予約で埋まった宿帳を確認のために開いていた。
この人は魚がダメだから肉に変更し、コチラは昨年生まれたお子さん連れだから〜…昨今の物価高は頭に痛いが、とはいえ質を下げたくはない。どうすべきかとウンウン唸りながらもアレコレ書き付けて行けば、廊下をドタバタと駆ける足音が近付いてくる。
バターン!
「お父さん!今年はあの人は来る!!」
何事かと顔を上げる間もなく飛び込んで来た娘からの質問に目を白黒させる店主。
「あの人ってどのお人だい」
「あの人だよ真っ黒で背の高くってガタイの良いイケメン!!」
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