キラは、警察庁の地下へと向かう階段をゆっくりと降りていった。この空間には、キラが階段を下りる足音だけが響いている。わずかに、水滴がしたたる音がした。床のシミが少し濃く感じた。
キラが初めて「ここ」に来たのは、警察官になって、ノエルのそばにいられるようになってからだ。ノエルから特別な場所に案内する、そう言われたときの胸の高まりを、今でも鮮明に覚えている。
あのとき、ノエルが囚人の前で静かに、ゆっくりとノエル自身の思想を話したとき、たしかに、あの人に神のような気配を感じた。ノエルに出会ってからキラの日々は輝いていたが、その中でもより輝いていた日だった、と思う。そのように、覚えている。
キラが地下牢の前を歩くと、囚人たちが牢屋の中から手を伸ばしてきた。キラはそれをうまく避け、奥の部屋へと進んでいく。この地下には表向きには囚人用の地下牢しかないのだが、この奥に、少しだけ開けた場所がある。キラはそこに、用事があった。
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