カヴェアル1「父が結婚した時、周りの人は酷く驚いたらしい」
普段本を持っている少し角張った指が今は珍しくそれを置き、少し前のバザールでカーヴェが一目惚れして買わせたグラスを持っている。それにどこからか取り寄せた度数の高いアルコールがグラスの動きに少し遅れて波を作っていた。
「君、そんなことよく知っているな。父から聞いたのか」
「父ではなく、お祖母様から聞いたんだ。俺はあまり父との記憶が残っていない」
「あぁ、そうだったっけか」
「お祖母様も随分と驚いたらしくてな。何度も聞いたんだ」
珍しく意識が残っているカーヴェは、それでも頭をあまり働かせずに頭に浮かんだものをそのまま口に出した。それを咎めることもせずに、アルハイゼンはいつもより少し語尾が伸び柔らかいトーンで返す。きっと彼を知ってる人が見たらいつもとの違いに随分と驚くだろう。
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