まだ考えてないよ！疲れが溜まっていた。

慣れない教師生活や他人との共同作業、年内にある発表会為の研究資料のまとめその他諸々。

元々物事を纏めるのは上手い方では無いが何とか長期休みの後半までにはやり終えて自分自身の休める日数は気付けば三日間だけになっていた。
そう疲れていた。頭も回らなかったのに身体、主に下半身は寧ろ元気で苛立ちすら感じている。

今夜はもういっそ苛立ちを解消する為にDVDを借りて安い酒でも飲んで寝てしまおう。何事も起きなければ三日は眠れる。そう思って白衣は部屋に脱ぎ捨て近場のレンタルショップに足を向けた。

(いつも思うけど…なんで海外ドラマのコーナーの近くにアダルトコーナーがあるんだろ…)
あからさまに黒地にピンクで年齢制限の描かれている暖簾を潜り肌色だらけのDVDパッケージを見定める。中には有り得ないであろうタイトルや著名人のそっくりさん、うちの制服に似たようなパツパツの服を着た女性物などもある。
(うわあ、こんなの見たらクラベルさんやタイム先生にサワロ先生は怒りそうだなあ、まあ生徒ものにはぼくも勃たないけど)
だとか考えながら狭いコーナーを物色してふと見ればそれが目に入ってしまった。

【ゆるふわ系女教師の一限目から中出し～言語でイっちゃおう～】

「………ぶっ！」
表面のパッケージは紫髪のゆるい癖っ毛、浅黒い肌でロングではあるもの、白衣を着てパープルツートーンカラーのボーダーシャツ、似た様な色のタイトスカートに綺麗に整えられたパンプス、更には特長のある六角形の黒縁メガネの女優が派手とは言えないが柄物スーツを着た褐色肌の後頭部に特徴のある剃り込みが入ったベリーショートの男優の胸元に隠れてカメラ目線で甘く切なげな表情を向けていた。

(え、えー…これ、ぼくう…？男優の方はどう見てもセイジ先生ですよねえ…)

どう見ても自分と同僚の教師に似せた出演者だった。興味本位にパッケージを手に取り裏返して見れば、目線にはモザイクが入って行為をしている画像が散りばめられている上に【恋する性物学教師は言葉一つで不倫エッチしちゃうの】【既婚者の同僚教師に恋しちゃった性物学教師】【身体で結ばれけど彼の得意言語は言葉責め！】【返事はハイかイエスだけ】【あの性物学教師が言葉責めでイきまくる120分！】煽り文句も良く出来過ぎている。というか返事の部分は授業に出た人間しか分からない筈、関係者が？だとか…考えてはみたが愉快過ぎる。

（えー…男優さんも見た目そっくりな人、よく見つけたなぁ、これー…背格好も後ろ姿もまんまだなぁ、顔も似てたらもう寧ろ面白いんじゃないですかあ？）

ー興味が勝った。連日の疲労感もあったし、スッキリ出来るなら何でもいい。寧ろ吐き出せなくてもこれはこれで見てみたい。手に持ったDVDを握り締め足早にその場から離れてセルフレジへと向かう。生徒に見られるとアカデミーで何を噂されるか分からない、見られたら誤魔化せるように名作も借りたし、あとは支払いを済ませてさっさとこの場を去れば良いだけ…なのに。

「─ ゆるふわ系女教師の一限目から中出し…ワオ、ジニア先生の趣味？」

背後か、自分よりも高い位置から聞こえた聞き慣れた声。このDVDをレンタルするにあたって絶対に見つかってはいけないであろう声の持ち主。

「セ、イジ先生…何でここに…」
「イエス！マイネームイズセイジ、ユーのFellow、セイジだよ？ジニア先生もレンタルしに来たの？実はワシ今夜はaloneで…ドラマ借りに来てみたんだけど…、ジニア先生を見掛けて…素敵な趣味をお持ちデスナ？」
「ち、違いますよお！？これは、ちょっと興味本位でえ…！」
「…Hum…ジニア先生、良かったらセイジのルーム、来ない？」
「へ？」
「それ……生徒が噂してたDVDなんだわ、ワシもちょーっと気になってたから一緒にwatchしよ！」
「は？」

戸惑ってる間に勝手に支払いを済ませアダルトDVDを袋に入れ手を引かれあれよあれよという間にマンションの一室に連れ込まれてしまったのだった。