白昼夢とデートするあっ、これ夢だと気づいたのは体に触れようとした手が空を切ったからだ。距離を誤った訳ではないのに目の前にいる男、ミヒャエルカイザーには絶対に触れなかった。
現在、俺は遊園地にいる。何故か親が福引きで当てたからといって、折角だからと俺を渡してきたのだ。それをすっかり忘れていて、家の掃除をしていたときに出てきたときにはヒヤリとした。期限を見ると明日まで、わざわざ貰ったものを蔑ろにするものなんだかと思ったのと、休みが重なって行くことに決めた。
事前に時間と場所を調べておいたおかげで特に迷子になることはなかった。
「やぁ、世一。」
聞き覚えのある声が聞こえた気がして振り返る。そこにはカイザーが立っていた。勿論、ここは遊園地なので、ユニフォームではなく私服を着ていた。今まで見たことがなかったのでまじまじと返事もせずに見つめてしまう。
「おいおい、そんなに見つめるなよ。本当に世一は俺のことが好きねぇ。」
「あっ、悪い。」
流石になにも言わずに見ていたら気になったようだった。いつの間にか数分経っていた。
「カイザーはどうしてここに?」
気になってそう聞いてみるも、笑ったままなにも答えずにいた。それを不思議に思って手を伸ばすが、出来なかった。カイザーはそこにいるのに居なかったのだ。
「は?」
「・・・あぁ、初めてだったか。説明をしなくて悪かったな。俺は本物のミヒャエルカイザーじゃない」
状況を理解できていない俺を放って、そんなことを淡々と話すカイザーは本人じゃないらしい。手に触れられないのなら
「俺の見てる幻ってこと?」
「まぁ、簡単にいうとそんなところだ。世一は白昼夢って知ってるか?」
「しらない、けど。」