ゲテモノSS―第一章―
「もう……また無茶したんだね……。」
恨めしそうな声に、トゥ・ハイネはゆっくりと目を開ける。映ったのは彼にとっては見知った先輩、ラム・オブザバトリの姿であった。しかしその表情は彼の見知ったものではなく、怒りで目の形は三角になっていた。そうなるのも当然だろう。“もしもの時”ということで付与していたはずの、“危ないときは拠点に戻る”魔法が発動されたのはこの探索中で今回が初めてではない。二度目だ。
「無茶はしないでねって、あれだけ言ったのに!」
「まあ良いだろう、こうして助かったんだ。ラムの魔法のおかげでな。」
当のトゥ本人は何も気にも留めない様子で、ラムから差し出される水を飲んでいる。怒りを見せながらもこうして世話を焼いてしまうのは、恐らくラムの姉属性に由来するものだろう。
3831