玉虫色紅を貰った、似合うからと
使いかけで申し訳ありませんといって手渡されたそれは、湯呑み茶碗の中に入っていて、玉虫色に光り輝いていた
部屋に戻って小さく包まれた風呂敷を広げると、中には小さな湯呑み茶碗に玉虫色の何かが入っているものだった
丁寧に筆と手鏡も添えられている
ああ、これは紅なのだと気がついた
「俺がこんなのつけても、似合わないよなぁ」
それでもなんだか気になって、筆を水で濡らしてくる
そういえば昔母が使っていたことを思い出して
その姿を真似する
水を含ませた筆で玉虫色の端っこをつい、と撫でる
すると中から紅色が急に現れる
「すごい」
何度か筆でなぞってから、手鏡を持って唇に薄くつい、と塗ってゆく
薄紅く色付いた唇は、不思議な色をしていた
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