星にあなたは託せない 賢者が人差し指を宙へ向ける。
忌々しい輝きから目を背けるように見上げた空には、無数の小さな瞬きが散っている。
彼はその空の色に似た髪をふわりと浮かせてミスラを振り返った。
「ほら、俺の名前ですよ」
そう言って笑った賢者の赤らんだ頬にもう一度触れて、その唇に自分のものを押し付けた。
風が吹いて足元の草花と一緒に2人を撫でていく。
冷たい空を指さしていた賢者の手が自分の背に回って、服越しにじんわりと彼の熱が伝わった。
月の視線を背中で受けながら、腕の中に包み込む。
今は、口付けに震える瞼に隠された小さな宇宙だけが、彼の世界の全てだった。
星にあなたは託せない
「涼しくなってきましたね」
賢者が開いた窓に向かってそう言った。
8490