若者は戸惑っていた。
口煩い先輩が神妙な顔で「重要任務だ」などと言うのを信じた自分が馬鹿だった。
意気揚々と指定された場所へ行ってみると、そこには一面に置かれた水槽の数々。
先輩のオ・ソンシクはにやにやと笑いながら、新人の任務だよと言って鼻歌混じりで立ち去って行った。
小さくてもガラス製のそれはそこそこ重い。ぶつくさ独り言ちながらそれでも真面目に水槽の掃除を始めだすと時間などあっという間に過ぎていく。
「貴重な時間を」
汗だくになりながらワゴンに水槽を乗せ、各オフィスに配置して回る。
誰も自分に興味を示さないのがなおさら辛い。ソンシクも同じ思いをしていたのだろうかと思うも、何かにつけ自分に面倒事を押し付けてくる先輩の小生意気な顔つきを思い出して憐憫の情は捨てた。
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