【二次創作】春さんとメイド服を着る話(春クリ)「メイド服ですか?」
「はい、今度着ることになりました」
学校の帰り道。春の問いかけに、クリスは明るく返す。どうも、文化祭でのクラスの出し物として、メイド服を着ることに決まったらしい。
「せっかくですから、春さんもメイド服を着ませんか?」
「え?」
春は思わず聞き返す。
「あ、いきなりすみません。うちのクラスは男子もメイド服を着ることになっていて、よかったら春さんもどうかなと、思いまして」
クリスは顔を赤らめ、上目づかいで話す。
「……私も、ですか?」
「はい、クラスのみなさんも、よかったら春さんも、と言っていました。もちろん、春さんが嫌でしたらお断りしますけれど」
クリスは期待を込めたまなざしで春を見る。春は少し考える。
「……まあ、せっかくですし、少しくらいなら」
春は、少し照れくさそうに言う。
「本当ですか!ありがとうございます!」
クリスは嬉しそうに春の手を取る。
「あ、でも、写真とかはダメですよ? 恥ずかしくて、学校に行けなくなりそうですから」
「私のスマホで撮るのは大丈夫ですか?」
「それなら…まあ……」
「よかった。春さんとの写真は、私だけのものにしますね」
クリスはそう言って微笑む。
「そうですね、二人だけの思い出です」
「では、楽しみにしていてくださいね」
それから一週間後、春は放課後の部室でクリスを待っていた。クリスの所属するアイドル部には試着室が用意されているため、着替えにはちょうどいいだろういうことらしい。ちなみに今日の部活は休みで、他に誰かが来る予定はないとのことだった。
「お待たせしました、春さん!」
部室に入ってきたクリスは、メイド服を着て、しっかりと髪もセットしている。
「メイド服、似合っていますね」
春がそう言うと、クリスは花が咲くように微笑んだ。
「ありがとうございます、そう言っていただけると、頑張った甲斐があります」
クリスはその場でくるりと回る。長いスカートがふわりと広がり、ふくらはぎのラインがのぞく。
「あ、あまり動くとその、よくないですよ」
「そうですか? ひらりとする感じがとても可愛いと思うのですが…」
クリスがたっぷりとしたスカートをつまむ。英国式挨拶のようでかわいらしい。
「そうだ、春さんの服も持ってきたので、ぜひ着てみてください」
そう言ってクリスは春に男子用のメイド服を渡す。ご丁寧にホワイトプリムも添えられている。
「スカート丈が、クリスさんのものより短いんですね……?」
「男子は動きやすい方がいいと、ひざ丈になったんです」
「うーん、さすがにこれを着るのは……」
「だめ、でしょうか……?」
クリスが少し残念そうに眉を寄せる。そんな顔をされたら、断れなくなってしまう。
「……わかりました、着ますよ」
「本当ですか! うれしいです!」
クリスは嬉しそうに笑う。その笑顔に、春は抵抗できなくなるのだった。
「ど、どうですか?」
春は着替えを終え、クリスの前に出る。
「とっても、素敵です!」
クリスはそう言うと、春の周りをぐるりと回り、その姿を写真に収める。
「すごく、すごくかわいいです」
「……なんだか、恥ずかしいですね」
春はスカートの裾をつまみ、もじもじと身をよじる。
「もう一枚、いいですか?」
「はいはい、どうぞ」
クリスが何枚か写真を撮る間、春はずっと落ち着かない様子でスカートを押さえていた。
「いっしょの写真も撮りましょう!」
頬を寄せ、ツーショットの写真を撮る。春は少し恥ずかしそうな、クリスは嬉しそうな表情をしている。
顔を撮った後、腕を組んで全身を撮影する。腕を組むのはこれが初めてなのだが、カメラに気を取られてクリスも春も気づいていない。
「これでよし、と」
クリスは春の腕を放し、満足そうに頷く。
写真の中の二人は、恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、仲良さそうに寄り添っていた。
「春さんも、私を撮ってくれますか?」
クリスがそう言って春にスマホを渡し、春は言われるがままにカメラを向ける。
アイドル部所属なだけあって、クリスはシャッターを押すたびにくるくるとポーズを変えた。そのたびにスカートの裾がひらひらと揺れる。
春はそれを撮り逃さないよう、シャッターを切る。スマホの中には、楽しそうなクリスの写真がたくさん保存された。
「いっぱい撮ってくださってありがとうございます。どきどきしちゃいました」
春からカメラを受け取り、クリスはそう言って胸に手を添える。
「クリスちゃんもですか?」
「、春さんも?」
「……まあ、少しだけ」
春は頬を赤らめながら言う。そんな春を、クリスは愛おしそうに見つめる。
「後で写真を共有しますね」
クリスは嬉しそうに写真を整理する。
「春さん、衣装を返しに行ってきますね」
春が着替え終わると、クリスはそう言い残して教室へと向かう。春は笑顔で手を振り、見送った。
その後合流して一緒に帰宅した。送られてきた写真の中で、二人は柔らかく微笑んでいた。