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    村人A

    @villager_fenval

    只今、ディスガイア4の執事閣下にどハマり中。
    小説やら色々流します。

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    村人A

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    フェンリッヒの血の味が気になるヴァル様の話。
    暴君月光。暴君→月光でもある。
    この頃の閣下には火力的な意味で絶対誰も勝てない。受けリッヒが苦手な方は注意です。

    その甘美な味は「フェンリッヒ、お前の血はどんな味なのだ?」

    まただ、とフェンリッヒはため息を隠すことなく吐き出す。
    こうしてこの暴君は度々こちらに何かを聞いてくる。それも、聞いてくるのは基本返答に困るものばかりだ。

    「…お生憎様、オレの身内には吸血鬼なんてモンはいないから知らん。アンタだって、自分の血の味なんて知らんだろ」
    「うむ、確かにな。…お前は“人”狼であろう?なら悪魔とも人間とも違う味なのではと思ってな」

    そんな趣味の悪い情報など知らん、とフェンリッヒはもう一度ため息をついた。
    話は終わっただろうと油断していたその瞬間、背後にある影ひとつ。動く前に掴まれた。

    「っ、なにすんだ!放せ!」
    「まぁ、そう暴れるな。すぐ終わる」

    後ろから片手の手首を掴まれ、腰に手が回される。

    「何がだ!」
    「やはり気になるであろう。俺が」
    「アンタかよ!!そこまでは知らんって言ってるんだ!!」

    恐らく血の味のことを言っているのであろう。
    なんとか振り切ろうともがいても、腕力では『力の大妖』とまで言われている吸血鬼に人狼たるフェンリッヒが叶うはずもない。というより、この出鱈目な火力の暴君にはまず勝てないだろう。

    「安心しろ、死ぬまでは吸わん」
    「なんで吸うことが前提で話が進む!?っ、この!吸ったらぶっ飛ばすぞ!!」
    「ククッ、それならそれでやってみるといい。そこらの骨抜きの悪魔よりお前と戦う方が面白そうだ」
    (ダメだ、何言っても聞きゃしない…!!)

    腰を支えていたはずの手がジャケットをズラす。ジャケットの下に何も身につけていないフェンリッヒは、すぐさま肌が見える。

    「服の上から牙を立てることはなさそうで有難いな、この服は」
    「そういう意味で着てるんじゃっ…!」
    「そう暴れるなと言っている」
    「人の話聞かないクセによく言えるな!?」

    依然もがくフェンリッヒに痺れを切らしたか、ヴァルバトーゼは正面に向き合ってから押し倒した。
    この間僅か数秒。反応しきれなかったフェンリッヒは、見事に押さえつけられてしまった。

    「ふむ、これなら良いか」
    「ちょ、待てって…っ」
    「もう遅い」

    開いた口が、牙が、フェンリッヒの肩口に刺さる。
    当たり前にそんな痛みなど感じたことがなく、どう痛いと言っていいかわからなかった。

    「…ッ、!」
    「息をしろ、フェンリッヒ」
    「い、たい…っ!」

    血が流れる。
    吸い出される血を埋めようと、身体中を血液が巡っていく。そこから生み出される感覚は、戦闘で血を流した時のものとはまた別だった。

    「く…ぅ、っ」
    「…地面に爪を立てるな」

    両手がそれぞれ取られ、手を繋がれる。
    絡めた指がやけに鮮明な感覚を伝えてきた。

    「力ならこっちに入れろ」
    「もう、吸うな…っ!」
    「そう言うな。もう少しだけ味あわせろ」

    手を握られ、グローブがギリギリと音を立てた。

    痛い。

    そのありったけの文句を手に込めても暴君はビクともしなかった。
    ガリ、ともっと深く牙が入った。

    「ヴァル、バ…トーゼ…っ」
    「…そのような声で呼ぶな」

    もっと酷くしたくなる、とゾッとするほど妖艶にヴァルバトーゼが微笑む。
    やめろと言っているのに、何を勘違いして捉えているのか。
    放された片手が今度は腰を押さえた。自由になった片手でヴァルバトーゼの肩を押しても動きもしない。

    (…も、無理だ…っ)

    目の前が霞む。息が上手く出来ない。心臓がうるさい。
    呼吸が少し浅くなった頃、何かが身体から抜けていく感覚。
    目の前に、自分を苦しめていた顔があった。

    「…生きてるか?」
    「……殺さない、ってんなら…もっと、加減…しろ、よ」
    「すまんな。…お前の血は甘い。実に甘美だ。だから止め時を見失ってしまった」

    地面に横たわりながら浅い息を繰り返すフェンリッヒに、ヴァルバトーゼはそう言った。

    「冷徹に見えながら、優しい男である、お前のような味だ」
    「…バカ、じゃないのか」

    アンタを殺すために一緒にいるのに、とフェンリッヒは心の中で悪態をついた。

    「バカとはまた手痛いな。…だが、確かに無理をさせたようだ」
    「っ!?」

    ぐい、とフェンリッヒの身体が持ち上がる。
    横抱きにされて運ばれているらしい。

    「ふ、ふざけるな!下ろせ、歩ける!」
    「そう遠慮するな」
    「嫌がってるんだよ!!わかれ!!」

    やはり力では敵わない。
    下ろす気がないとわかったら、フェンリッヒは抵抗を辞めた。

    「…血を失って、少し眠いであろう。原因は俺だからな、その間守ってやる。少し眠れ」
    「……守れなかったら、オレが今度は噛み付いてやるからな」
    「フフ、それも悪くない。だが仲間を守ることが先だ。安心しろ、必ず守る。約束しよう」

    その言葉にやたら安心感を覚え、フェンリッヒは意識を手放した。

    静かになった彼を人目につかない場所に運んで下ろし、寝かせた隣にヴァルバトーゼが座り込む。
    顔にかかった髪の毛をさらりと横へズラす。

    「……お前があのような顔が出来るとは、驚いたぞ」

    涙を浮かべ、堪えるような、懇願するような、いつもの仏頂面とは似ても似つかぬ表情。
    その顔と声に動揺してやり過ぎた自覚はあった。
    思いつきでやることではなかったな、とヴァルバトーゼはひとり頷いた。
    横を見ると、少し険しい顔で寝息を立てる男がひとり。
    その頬に手を添えて、見る。

    「…あのような姿を見せるのは俺の前だけにしておいてくれ」

    ─いや、やっぱりあんな姿を何度も見せられたら保たんな。

    暴君はそう言って笑う。
    そこに流れているのは、魔界とは思えぬくらいに、穏やかで優しい時間だった。

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    recommended works

    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025

    last_of_QED

    CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
    「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html
    俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】



     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
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