扉の開く音が来客を告げる。
振り返る必要はない。この部屋にそうやって入ってこられる人物など限られている。
「ハインライン大尉」
「お疲れ様です、艦長。何かトラブルでもありましたか」
予想通りの声に手を止めぬまま答えれば溜め息が聞こえてくる。
「トラブルと言うか苦情だな。”ハインライン大尉が物凄い勢いで作業を進めていて他が休むに休めない”と」
連続した足音がすぐ後ろで止まった。
「別に他の者に同程度の作業は要求していません。休みたいのなら休めばいい」
「しかしなぁ」
椅子の背に手を掛けてディスプレイを覗き込んでくる。
「あぁ、やっぱり。どれもこれも今すぐ、君がやらなければならないものじゃないじゃないか」
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