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    ny1564yy

    限りなく心広めの人向け。思い出したとき使うかも。

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    ny1564yy

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    1個前の女装の裏でこそこそ書いていて、軸になる話があったらもう少しキャラ立てやすいかなって思って書いてたんですが、よもや日記なので興味あればどうぞ位の感じです。文章、読むけど書かないので読みにくいかと思います。自分用みたいな。

    まだいっぱい言い訳したい時期の上杉と異世界が楽しくなってきてる頃のピ

    ---------------

    ヒト型の女悪魔が命乞いをしてきた。
    俺の右腕は辛うじて繋がっているだけで動かせないし、足にも腹にも矢が刺さったままだ。だと言うのに俺の左腕がまだ動くのを見て、見下ろした先の悪魔はガタガタ震えて、止めて欲しい、死にたくない、と小さく声をあげる。

    (……まるで、ひとだな)

    すでに痛みで意識を失いそうな状態で、俺は剣先を悪魔に刺し、ゆっくりと押し込んだ。



    ---------------


    「ごめんなさい…私がもっと早く奇襲に気が付ければ」


    いつもの元気を、欠片も見せずひどく落ち込んだ園村がゆっくり頭を下げる。
    意識を失った後、何処かへ運び込まれたのだろう。簡易ベッドのような場所で横になっていた俺は園村を横目で見ていた。
    とにかく出血が多すぎた。
    頭がまだぼんやりするし、目を開くのも億劫だったが、なんとか首を横に振る。


    「後ろからの奇襲だから……仕方無いよ」


    別に死んだ訳じゃないし、と笑って見せると酷く傷付いた顔でスカートの裾を握りしめた園村はホントにごめんね、と小さく謝って部屋を出ていった。

    実際の所、本当に死ぬ訳ではないのだ。いや、全員が倒れたら死ぬのかな?今のところ精々3人までしか倒れることはなかったので、死ぬと言う意識がなかったが、もしかしたら危なかったのかもしれない。

    たまたま今回は奇襲を受けてパーティーは分断。俺と園村と稲葉が一緒だったけど、南条くんと上杉とは引き離されてしまった。
    それが却って俺たちが生き残れる術に繋がった。南条くんと上杉は俺が悪魔を倒した後に、比較的軽傷でこちらに駆け付けてくれたらしい。
    その時には俺の意識は無かったから、細かいことはわからない。

    とにかく回らない頭と冷えた身体では何もする気は起きなくて、目を閉じた。
    大きな物音もせず、多分ここは商店街近くの何処かだとは思うが人の声もせず静まり返った閉じた空間は、明らかに非日常だった。
    ぼんやりと周囲の気配を探っていると、トンットンッと軽い足音が微かにした。知っている音だ。


    「オイオイ!オレ様をパシリにするたぁ~いい御身分だなぁ!!」


    バカみたいな明るさで笑いながら駆け寄ってきた上杉は、ビニール袋を片手にぶら下げ俺の側に腰かけた。普通に煩い。


    「南条がもーちょいゆっくりしたら医者まで行って輸血してもらおーぜって話してた」

    「そっか。悪いな」

    「…でもこの世界の輸血ヤバそうでない?」

    「大丈夫だろ、多分」


    無頓着すぎんだろ~とかマジかぁ?とかなんとか言いながら、上杉は持ち込んだビニール袋から少し温いお茶を出して手渡してきた。それから果物の、蓋の開いた缶詰。
    一先ず、ゆっくりとお茶で喉を潤す。ようやく少しずつ、非日常の中にある日常に戻るような感覚だ。
    異世界に着いて、少しずつその中にある当たり前が増えていく。古い体育館、車が通らない道、悪魔との戦い。異世界に来る前は30分もあれば商店街へ着いていたのに、今となっては倍以上の時間が掛かることもしばしば。たどり着いた頃なんて、少しの移動も命がけだった。
    それも徐々に馴れていく。現れる悪魔が見覚えのある悪魔ばかりになった頃には、これが当たり前の日常になった。

    「……何読んでるんだ?」

    缶詰の桃を摘まみながら上杉の方に目を向ければ、退屈したのか雑誌に目を通していた。


    「んん~…単なる週刊誌。デビューしたてのともりん出てたから買ってきたけどやーっぱカワイイよなぁ」


    雑誌を目一杯広げて此方に向けてきた上杉の笑顔を、久しぶりに見た気がする。
    日頃から笑顔(?)は絶えないやつだとは、感じていた。それでもその何てことの無い表情を目にする機会は減っていた気がする。
    ………別に元々上杉と、特別仲が良かったわけでは無いけれど。


    「………おまえ~オレ様に気があんの?」


    長く見すぎたからか、こちらをからかうようににやけた顔を向けてきた。あるわけ無いだろとは思ったものの、言い返すのも面倒になって毛布をかぶって目を閉じた。



    あれから幾日か過ぎた。何度も悪魔を倒して回ったお陰か、異界に飛ぶ前よりもずっと皆との連携もうまく取れるようになって、怪我する場面も減った。

    ただ、今回は武器を新調した事もあって少し経験を積んでおきたかった。いくらペルソナが使えるとはいえ、手に馴染まない武器ほど怖いものはない。
    何戦か手慣らしに悪魔を殺し、仲間の様子を見る。新しく降ろしたペルソナも、武器も皆うまく使いこなしているようだった。

    消耗品の買い付けと、武器の手入れを済ませておきたい。南条くんに声を掛けて、コンビニへ足を向けた。


    「上杉、大丈夫そう?」


    駐車場スペースで穂先をじっと見つめた上杉に声を掛けた。

    戦う時の上杉は案外視野が広いから、少し後ろから周囲を見てサポートに回ったりするのがメインで、最前線を突っ走る稲葉や俺の間を縫って敵の前へ躍り出る。槍で距離間を上手く保ちながら加勢してくれる。園村や南条くんが忙しくなれば、ペルソナで補助にまわったり、回復にもまわってくれる。
    大袈裟にビビって声が響きすぎたせいで、敵に囲まれたことも無くもないけど、頼りになる場面が多い。

    戦闘を終えたばかりの上杉が、周囲の警戒もそこそこに武器を見てぼんやりしているってことは、こちらが思っているよりも新しい槍がしっくりこないのかもしれない。
    剣だって重心が少し変わるだけで力の入れ方が大きく変わる。槍だって同じだろう。


    「んん?ん~……オレ様の華麗な槍さばきが大丈夫じゃない瞬間がねーべ」

    「へぇ。ぼんやりしてたから」

    「オマエさぁ~……、」


    目線をこっちに合わせずに、やっぱり穂先を見つめていた。


    「ん?」


    何度も何度も口を開いては閉じて。珍しく言葉を選んでいるような仕草だ。
    意を決したように、こちらに向き直って、眉間にシワを寄せて。似合わない顔して上杉は言った。


    「ちょっと最近…異常に前、突っ込んでいってない?」




    ---------------


    入学してから今の今まで、ずっとコイツの事は『無口な不思議ちゃん』だと思っていた。正直なところ何を考えてるのかさっぱり分からなかった。
    中学の時のいじめが役に立ってるのか、他人のマイナス感情を向けられることには馴れていたから、何となく人の感情は分かる、と思う。
    (クラスの奴らでも、純粋にオレを下に見ているやつがいたりするワケよ!そういうの分かるんだよな、やっぱしよぉ)

    こうして一緒に戦うようになって色々気づいたけど、楽しそうだって思ったら結構楽しそうにしてるし、めんどそうなコトって思ったら外に出さないようにしてるぽかった。(でも大体捲き込まれてめんどくさそーに対処してる)

    現にこの間コンビニおにぎりの海苔、キレーに取れたのを嬉しそうに見てたのをオレ様は見ていたし、マークと南条がちょっと口論になりそうだったときスッと眼をそらしてた(結局2人に声掛けられてたけど)良く良く見てると分かりやすい部分も多かった。


    ま、それは別にいーんだけど。そんなやつが最近、というか少し前からなんか変だってんだからちょっと気になるだろ?何が変って言われるとわかんねーけど、オレ様の第六感ってヤツ?ピンッときたからちょっとカンサツしてたんだよな。


    「移動中とかはそうでもないんだけど。休憩してる時とかワザと武器から手、離してたっしょ」


    一個目の違和感はコレ。
    この異常事態が始まってすぐの頃は休憩してる時もやっぱ何かあったら怖いからって武器は握ったままになってたり、すぐ手が届く所に置いてあったりしてた。
    でもそれじゃあ休憩にならないからって、休憩するヤツはしっかり休憩しようって南条が言って(今でもしんじらんねーけど南条が言い出した。あの、南条が)休んでる時は武器を持たないようにしてた。それはコイツも同じ。
    それでも何かあった時の為に、手を伸ばせるようにはしてた。少し武器が離れたところにあってもすぐ駆け出せるようにしてたり。サブで使えるナイフ仕込んであったり。

    それが、ポケットに手を突っ込んだりとか、身体の何処かに手が触れた状態になってる事がある。


    「別に変ってワケでは無かったし隙があるわけでもなかったけどな」


    「………」


    少し困った顔でこっちを見てる。ちょっとカワイー顔してんな。てか、多分これだけでは正解じゃないんだなって感じたし、そもそもこの話になんで踏み込んだって少し後悔し始めてんだけどもう後には引けねー
    好奇心だけで踏み込んで、とんでもないコトしちゃったのかもしんない。

    でも気になるじゃん?バカやってたってやっぱコイツと他のヤツとちゃんと元の世界に戻りたいし、誰か一人欠けたらこの先どうやったって戻れる確率下がるんだし。

    だから、オレに出来ることなんて無いかもしんねーけど。なんとか持ち直してもらわないとこまんだよなぁ~オレは目の前で落ち着かなさそうにしている指を、逃がさないように掴んでそのまま続けた。


    「あともーいっこ。ペルソナ喚ぶより、自分で斬りかかりに行くの、多くない?」


    猫みたいに丸々として大きな目が、こぼれ落ちそうなほど見開かれてオレを見つめていた。


    --------------


    正直無意識だった。
    でも指摘されてみれば確かにこのところ肉体的な疲労の方が強い。
    きちんと悪魔の耐性や周りの動きを考えて立ち回っているつもりだっただけに見抜かれるとは思ってなかった。

    今思っていることを口に出すのは正直怖い。
    だけど敢えて指摘してきたってことは多分意味がある。こちらが思っているよりもずっと上杉は周囲を良く見ている。


    「…何あったかわかんねーけど、死んでもいいのかよ?」


    瞬きした次の瞬間に映った顔は信じられない程顔が強ばっていた。学校の中庭で機械に襲われたときも、顔だけは酷く不快そうな顔でアキの居た場所を見つめていたことを思い出した。


    なんか、なんとなく、上杉なら、良いのかも。
    理解してもらえなくても、軽蔑されても、これから正面を向くための何かをくれるのかもしれない。
    当たり前の何時もを、思い出させてくれるのかもしれない。コイツは立場的に俺に近くて、それでいて俺よりもずっと普通で、きっとイイヤツだ。


    「ちょっとだけ、聞いて欲しい」


    縁石に腰掛けて、ゆっくりとあの日の、死にかけた日のことを話した。奇襲を受けて園村がまず倒れた事、フォローが間に合わなくて回復にまで手が回っていなかったことから順番に。
    上杉はぼんやりと遠くを眺めて黙って話に耳を傾けていてくれる。


    「…あんなに意識は朦朧としていたのに。あれからかなりの数の悪魔を倒してきたのに」


    上書きされていかない。
    剣の柄を掴むと鮮明に思い出す。


    「あのときの感覚が忘れられない…剣を押し込んだ時の、骨と骨の隙間で。体重を掛けて押し込んだ時の剣先が少しずつ、埋まっていく光景と。肉の硬さと」


    剣先は、肋の隙間に綺麗に刺さったけれど、そのとき使った剣は身幅も広くて。途中で硬い感触に当たった。更に体重をかけて押し込めば鈍い音を立てたけど、少しだけ勢いをつければ、何もなかったかのようにそのまま剣先は地面に向かって進んだ。


    「眼を、見開いて。震えながら足先から消えていって。怯えた声は少しずつ忘れていくのに、刺したときの感覚だけが残ってる」


    少し痙攣して、途中から声というよりは喉から空気と液体が抜けるような音がした。刺して出血したんだろう。血を吐く時の音だった。
    それに合わせて空気が漏れ出た音がしていた。
    何度も、何度も。


    「ほんとは、あのとき殺したやつは……人だったんじゃないのか?」


    記憶なんて曖昧で、あの悪魔が消えて消失していく姿は、ほんとは別の悪魔を殺した時に見たのが上書きされてるだけで。
    あの時、俺が殺したのは、俺達と同じようにこちらの世界に迷い込んだ子だったんじゃないのか。
    あきに、もしかしたら他の悪魔に唆されて。
    人のような姿を取れなくなってただけで。


    そう思ったら

    「オレの方がよっぽど、人じゃないのかもしれない」


    あんなに命乞いしていたのに、躊躇いもなく人みたいだって思って。もしかしたら本当に人を殺したのかも知れなくて。声に出してしまったら、もう上杉の眼なんて見ていられなかった。

    俺や上杉は、明確な目的があって戦いに身を置いた稲葉や南条くんとは違う。でも上杉だって、戦いが好きな訳じゃない。そもそも警察署で捕まっていたのをそのまま一人学校へ帰す訳にも、一度引き返すための時間もなくてそのまま連れてきただけだ。
    でも俺は自分の意思で学校を飛び出して戦いに身を置くことにした。病院から学校へ戻る最中、この状態でも上手くやれるんじゃないのか、だから自分がこの事態を収める為に止まっていてはいけない、といういい加減な理由をこじつけた。



    そしてそんな適当な気持ちひとつで進んできた末に、あのタイミングで確実に俺は一線を越えた。身を守るために殺したんじゃない。確実に殺したい、やらなくてはいけないと、その気持ちだけで命を奪った。
    セベクビルに忍び込んだ時だって、人間相手に戦ってたけど。結局気絶させるまでに留めていたのに。

    悪魔だったとしても、逃がしたって良かった筈だ。相手だってもうこちらに襲いかかれる程の体力はなかったんだから。



    脂汗が凄くて前髪が張り付く。
    手も汗をかいていて、制服の端を握り締めて。
    口の中はもうカラカラだし、口に出してしまうと見ないふりしてきた思いが表に出て、強固になる。
    自分の口から出た言葉なのに、もう一度耳から入って頭に入って中で反響してるような気がしてきて、後ろ暗い気持ちがじわじわと耳から、足元から侵食してきているような気持ち悪さがある。

    視界が霞む。
    ぼんやりと白くなる視界の端で、スッと細い指先が映り頬に添えられる。そのまま促されるようにゆるりと顔を引き上げられる。


    「あの時お前の足元には何もなかった。あったのは血だけ。それもきっとお前のだ」


    綺麗な瞳に目を奪われた。
    まっすぐ俺を見つめていて、日の光が反射している訳でもないのにキラキラと輝いている。


    「あの時倒したのは人じゃない、悪魔だった。マークもマキちゃんも悪魔しか見てないって言ってた。人間は俺たちだけだった」


    スルスルと頬に添えられた指先が下がっていき、俺の指に絡む。中指を優しく擦られ、軽く握り込まれる。随分と冷えていると思っていた自身の指よりも上杉の方が少し冷えていた。


    「あの時瀕死の悪魔を逃がしたらお前が死んでたかもしれないんだから、間違ってなかった。良いんだってもう忘れて」

    「……」


    そんな簡単に忘れられるならきっともう忘れてるだろうし、平常であれば俺だって同じことを考える。逆の立場なら間違いなく同じ様に言った筈だ。少し面白くない気持ちを抱きつつも、握られた指先がジワジワと暖かくなってきてそこばっかり気になってきた。
    ……誰かと手を握るとか何時ぶりだろう。


    「それでも怖いんだったらさぁ…」

    「その時は手握ってやっても良いけど?」


    やっぱりイイヤツだった。




    ---------------


    なんてコト無いふうを装ってとんでもないこと言ってやった自覚はショウジキ、ある。ヤバい踏み込み方したなって。
    なんでもないクラスメイトする提案じゃ無いし、ヤロウの手なんて握ってどーすんだってーの。マキちゃんとか可愛い女の子だったらありかもしんないけどさぁ。なんつーかパパーッと悪いやつやっつけて、オレ様のファンがさらに増えちゃって。
    事件が終わった後のテレビの取材で世界を救ったヒーローとして楽しく生きてく予定だったのに毎日命がけだし、みんなコイツのコト頼りにしてるし全部が予定外だ。

    それにけっこーマジトーンで話しちゃってちょっと恥ずかし~って思ってたら、握ってた指先がオレの指を強めに握り返えしてオレ様の日常がとんでもないことになりそうな予感がプンプンするな!
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