たらればに妬く慌ただしく舞い込んできた依頼をこなして夜も更けてきた頃。ここ数日の仕事は郊外のものばかりで滞在中はブレイズウッドの宿を借りていた。
けして広くはない部屋の簡素なベッドひとつを男ふたりで使っているだなんて、この集落の人たちは想定しているだろうか?
ましてやそのひとりは郊外を拠点にしているカリュドーンの子、当代のチャンピオンである赤いマフラーその人だ。他愛のない雑談をしながらベッドの上で彼に抱き締められている。見回りも済ませてから彼はここに来たから時分は深夜もいいところ、疲れていて寝てしまいたいだろうに会話に付き合ってくれている。狭いベッドの中で交わされる他愛のない雑談は次第に彼の──ライトさんの過去の話になっていく。根掘り葉掘り聞いたりしているわけではない。当たり障りの無いところだけだ、若い時はどんなだった?その程度。
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