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    おわり

    @owari33_fin

    アズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア3️⃣ Az-24『自由にする力』

    「ジェイド、くっちゃべってねぇでさっさと連れて来い」
     部屋の奥から響く怒気の籠った低い男の声音に、僕の心臓は縮み上がった。珊瑚の海、ナイトレイブンカレッジ、そして夕焼けの草原……今までそれなりにガラの悪い連中と対峙してきたつもりでいたが、この声はなんだ。こんな、声だけで肝が冷えるなんてありえない。
    「さぁこちらに」なんて案内しようとするジェイドの頭を張っ倒して逃げる想像をしてはみたが、それを見越してバタリと閉じられた扉に、僕はもう腹を決めるしかなかった。
     ジェイドとフロイドの後をついて初めて対面した馬鹿ウツボの父親は、二人の顔を混ぜ、厳しさを滲ませた凄味のある顔をしていた。二人の髪を更に短くカットしたターコイズブルーの短髪に、ゴールドの両目がギッと吊り上がった目尻に、一瞬ジェイドが重なる。が、全体的に見るとフロイドに近い印象を持つその顔に睨まれれば、漁師の網にかかった魚のように、僕は身動きが取れなかった。
    「お前が、オジキの所のクソッタレ弁護士のガキか?」
    「……はい、アズール・アーシェングロットと申します」
     クソッタレ弁護士なんて……あの義父は一体何をしでかしたんだ。冷や汗をかきながら、印象良くいようと礼を払い、丁寧に自己紹介し頭を下げる。夕焼けの草原で、僕は年上の獣人に「老け顔だ」と言われ、実年齢より上に見られる事が多かった。けれど、この男の隣に立てば、自分がどれほど未熟でまだ、子供を脱したレベルかを分からせられる。この男は今この場で圧倒的な強者だった。強者の放つ圧、視線だけで射殺せる、これは自分よりも遥か上の上位の肉食魚だ。喉がカラカラになるのを感じながら、僕は口の中でかき集めた唾液を悟られない様に飲み込んだ。
    「そういえば、お客様にお茶も出さないのは失礼ですね」と、紅茶を淹れてきますと場を離れるジェイドの背を、男がちらりと見送り「で?」とフロイドに一言投げかけた。
    「フロイドお前……ダチを家に連れて来た理由はなんだ? まさか家でゲームでもして仲良く遊ぶ訳じゃねぇよなぁ?」
    「あはっ! んなわけねぇから。アズール連れてきたのは、ジェイドを数発殴らせるためだしぃ……あぁ、あと親父に言われた仕事、ちゃーんと片付けてきたよ。ドラックと……ついでに売春斡旋、ゲスいやり方してるやつもいてさぁ、再起不能なぐらいボコっておいたよぉ……」
    「それに関しては、ジェイドに言って調査書としてまとめろ」
    「りょ〜かい」
     僕の隣、いつもの様に砕けた喋り方をするフロイドに、僕の方がハラハラして心臓が持ちそうにない。そして同時に、ここに僕を連れてきた理由が、本当にジェイドをぶん殴るためだけという理由なことにも驚いた。だったらこの部屋の中まで案内しなくてもいいじゃないかとため息を付きそうな僕の視界に、少し震えた指先をギュッと拳にし握るフロイドの手が見えた。
     フロイドにとっても、目の前の父親は上位の肉食魚なのだ。
    「で、それだけなら、もうさっさとダチを連れて退出しろ。お前に割く時間があるほど暇じゃねぇ事ぐらいわかんだろ?」
    「ん〜、本題なんだけどさぁ……親父の事絞めたら、今すぐオレがここのボスになれんの?」
    「はぁ? クソガキが何言ってんだ……テメェにすぐさま椅子をくれてやるほど、俺は耄碌してねぇ」
    「オレさぁ、金魚ちゃんの為に、今すぐ親父の椅子が欲しいんだぁ。だからその椅子ちょーだい♡」
     そう言った瞬間、フロイドの横っ面を男の足先が蹴り込んで、そのまま横に吹っ飛んだ。あのフロイドが本当に手も足も出せぬまま床に転がり、起き上がって「イテェ……」と頬を押さえている。口の中が切れたのか、ボタボタと垂れる血に、僕は青ざめ、動けなかった。
    「ねぇ、なんで怒ってんの?」
    「なんで怒ってるのか、本気でわかんねぇのか?」
     その場の空気が、一瞬で重くなる。特大級の人魚の威嚇を浴びて、この場にいるだけで身体がぐっと沈み込みそうになる。身動きも、息さえも出来ないようなこれが、珊瑚の海を仕切るギャング、リーチのボスなんだ。
    「お前が、陸で会った人間にマジになってるのは報告書で知ってる。リドル……だったか? 俺はコイツの報告書を七年半ほど見てきた。が、クソつまんねぇ男じゃねーか! お前ら二人がどうしてこんな男に執着してるのかちっとも理解できねぇ……確かに顔は極上品かもしれねぇが、いまじゃ魔力もないタダの一般人。こんなやつのせいで組が危険に晒されるなら、俺はガキごと処分する事を本気で考える」
     ガキごと処分……と聞いて、僕もフロイドもこめかみがぴくりと動く。
    「オヤジさぁ、それ本気で言ってる?」
    「本気に決まってんだろ、逆に冗談だと思える方がお気楽すぎんぞ」
     ハッ! と鼻で笑う男は、殴りかかろうとしたフロイドの腕を流れるようにあしらい、グッと掴んで関節を外した。フロイドから獣のような声が上がり、引き詰められた絨毯の上でのたうち回った。
    「八,〇〇〇億マドル……これが何の金か分かるか?」
     床でのたうつフロイドを踏みつけながら、男がそうつぶやく。フロイドがふるふると左右に顔を振る。
    「これは俺が組を継いでから積み上げたウチの総資産額だ。これと一緒に、傘下に二〇〇以上のグループと、四,〇〇〇人を超えるファミリーが俺の下に着いてきてる。フロイド……お前にこの意味が全部わかるか? 俺の肩にどれだけのモンが乗っ掛かってるかも分からずに、雑魚に入れ込んで椅子がほしいだぁ? ボケてんじゃねぇよ!!」
     男の足が、フロイドの腹を蹴り上げた。吐き出された鈍い声は、苦痛に歪み、あのフロイドが手も足も出せぬまま一方的に殴られている。
    「俺の優先事項は、ファミリーやシマを守ることだ。その中に、お前らが執着するリドル・ローズハートは入っていない」
     きっぱりと言い放たれた言葉に、僕はリドルを、そして子供たちを無価値の様に言われた事に怒りを感じ、ただソファーの上で握った拳を震わせていた。そして同時に、こんなにも怒りを感じているのに、足が震えて動けないなんて、僕はまだ、あの時の弱虫のままなのか!?
    「もう一度言う、こんな男の事なんかオマエのダチに任せて、オマエはもう縁を切れ」
    「……だ」
    「はぁ? ちっせぇ声でしか話せねぇのか? 言いたいことがあるならハッキリ言えよ」
    「嫌だつってんだよ! オレは、もう二度と、あんな……死にそうな顔の金魚ちゃんを見たくねぇ……オレのせいで、オレがあんなガキだったせいで、傷つけて、泣かせてボロボロになって……なのに、なのに金魚ちゃんは、オレのことなんて全然恨まずに、オレとの稚魚を大切に、育ててんだ……」
     男に踏みつけられた脚をどかしたフロイドが、起き上がり膝をついて座り、手のひらを地に付け頭を地面につけた。
    「オレに、金魚ちゃんを自由にする力をください」
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