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    おわり

    @owari33_fin

    基本的にアズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア4️⃣前編-5『崩壊①』

    「ど……どうして」
     anathemaに子供たちのことが知られ、アスターとサミュエルの二人は奴らに捕まり、護衛の人は既に沈黙させられている……目の前の、ほんの数時間前からは考えられない光景に、ボクは立ち尽くすことしか出来なかった。
     ダーハム・グレイソンの目の前には、先程まで子供たちを護衛してくれていた彼が床に伏し、その体はピクリとも動かない。少し前までボクのことを気にかけて、子供たちと留守番してくれるような優しい人だった。どうしてこんな事になっているのか到底理解の追いつかないボクは、どうして……とそう呟くしかなかった。
    「どうして? これは仕方のない事だったのです。私達の姿を見て、この方は急に銃を向けられました。我々は正当防衛をしたまでですよ?……まぁ、うっかり殺してしまいましたが」
    「自分たちが何を言っているのか、それを本当に分かって言っているのか!?」
     人を殺しておいて、どうしてそうもあっけらかんとした態度でいられるんだ? 理解しがたい目の前の男が、背後の部下に目線で合図すると、取り押さえようと複数人が飛びかかってきた。
     子供たちが囚われていては、逃げることも反撃することも出来ず、非現実的な目の前の光景に、ボクの頭は真っ白になり、体は床に縫い付けられたかのようにその場から動けない。
    (もう、だめなの……!?)
     最悪の状況に、世界が真っ暗になりそうなボクの前、襲いかかる黒ローブ達とボクを隔てるように、飛んできた細長い杭が床に突き刺さった。
     何事だと怯む黒ローブ達を、陰から現れたジュリオと他の護衛の人たちが、背後から銃で一人を無力化し、ジュリオは小型ナイフを飛ばし、それが黒ローブの脚に突き刺さり動きを封じた。
     そして、ダーハム・グレイソンの背後。音もなく現れたフェデーレさんが、奴の首を子供達がされているように圧迫し、その首をへし折った。
    「坊ちゃん方、ご無事で?」
    「「フェエじぃ!!」」
     フェデーレさんに助けられた二人は、彼に頭を撫でられ、その脚に抱きついて怖かったと泣いている。
     床に倒れたダーハム・グレイソンの首はだらりと曲がり、完全に死んでいる。今までのことを考えれば、余りのあっけなさに呆然としてしまう。本当にanathemaの所長であるダーハム・グレイソンが死んだなら、もう子供たちは隠れ住まなくてもいいんだろうか? アズールやフロイドたちを危ない目に合わせることもないという事なのかと……そう考える一方で、ナイトレイブンカレッジで初めて見た、ヤツのあの執念深そうな白い瞳が、脳裏にチラついて仕方なかった。
    「「かあさん!!」」
     今しがたフェデーレさんにくっついていた二人が、ボクの所に駆け寄ろうとした。まだ処理が追いついていない脳で、それでも二人が無事で良かったじゃないかと思ったその瞬間——何故か、目の端に立っていたジュリオが、アスターとサミュエルの二人に向け、手に持ったナイフを数本、投げた。
    「なっ!??」
     驚くボクより早く、フェデーレさんがとっさに動いて二人を庇い抱きしめていた。だが、そのナイフを投げた範囲は広く、他の護衛数人も深く刺さったのか、その場に伏してしまった。
    「ジュリオ……おまえ、」
    「すみません、フェデーレさん……リデルも……本当にごめん」
     体に刺さったナイフを抜いたフェデーレさんは、見る見る顔色が悪くなり、大きく咳き込むと抑え込んだ手のひら、指の間から溢れた血が垂れた。
    「はは、フェデーレさん、この致死量の毒ですら直ぐには効かないなんてチートすぎますよ」
    「おまえ……こんな事して、ファミリーが、どんな……制裁、をすると、わかって……」
    「分かってます。でも、でも……俺の嫁と娘を助けるには、こうしなきゃ……もうどうしようもなかったんです!!!」
    「チッ! 人質にでも捕られたのか……だからって、容赦するわけないだろ」
     フェデーレさんが、ジュリオに向かって攻撃しようとしたが、ジュリオがボクや子供たちを殺すつもりで杭やナイフを投げ付ければ、護衛対象のボクたちを最優先で護るために、フェデーレさんは、杭やナイフを足で数本弾き、弾くことが出来ない杭は体で受けた。
    「本当に暗器の扱いだけは、人一倍上手い……」
    「フェデーレさん……すみません……すみません」
    「謝るぐらいなら……敵にまわるんじゃあない」
     咳き込むフェデーレさんの口からゴホゴホと血が溢れ、アスターとサミュエルが悲鳴のように彼の名を呼ぶ。本当に立っているのさえ限界のフェデーレさんは、「坊っちゃん方、私は大丈夫ですよ」と微笑んで最後。何度も泣きながら謝るジュリオに、ナイフで喉を掻き切られ絶命した。
     吹き出す血が部屋の真っ白い壁に吹き付けられ、これが現実なんて信じられなかった。
    「よくやりました」
     パチパチと拍手の音に振り返れば、フェデーレさんに首をへし折られたはずのダーハム・グレイソンが、ぐねりと折れた首をそのままに、立ち上がり拍手している。
    「は??」
     ボクが驚いて声を上げれば、ダーハム・グレイソンが小瓶から取り出した小石程度の赤い石を、指先でつまんで何かを祈る。すると、大きく骨が変形する歪な音を立てながら、彼の首が緩やかに元の位置に戻り、確認するようにゴキゴキと音を立てて首を回した。
    「あぁ、〝なぜ生き返った〟とでも言いたげな表情ですね。もちろん此度の奇跡も全て、我々が研究する呪石より与えられしもの……私の死因である〝骨が折れた〟という事実自体が消え去ったので、私の死自体もなかったことになりました。まぁ、それだけではありませんが……」
     こんな死さえも覆せる手段を持つ者たちが、ボクたちの相手だなんて、あまりにも分が悪すぎる……!
     今すぐにでも子供たち二人を連れて逃げなければならない、けれど……どこへ、一体どこに逃げればいいんだ?
     目の前で重なる死に動揺するボクの腕を、ジュリオが強く掴み引っ張り、ダーハム・グレイソンの前に突き出した。
    「いたッ……ジュリオ、何を……!?」
    「リデルとその子供たちを引き渡すんだ、早く、俺の妻と娘を開放してくれ!!」
     真っ青な顔で鬼気迫る勢いのジュリオと、そんな彼を興味なさげに見つめるダーハム・グレイソン……そして、ダーハム・グレイソンは、なんの感情もなく、妻と子を開放してくれと願うジュリオに向けて引き金を引いた。
     ドンッ! っと……大きな音とともにジュリオの体、空間がグニャリと曲がり圧縮されるような圧がかかり、言葉を発する間もなく昏倒した。
    「え……? ジュリオ……??」
     ボクの足元に崩れ落ちたジュリオの体、顔面の穴という穴から血が流れ、絶命していた。ほんの数時間前まで、楽しそうに妻や娘の話をしていた……なのに、どうして……!!!
    「所長、こちらどうしましょうか?」
    「仕える部位はあるだろう、該当部署に回せ」
    「かしこまりました。それと、人質の方はどうなさいますか?」
    「子供の被検体は少ない、丁重に扱え。女の方は、いつものようにバラして使えばいい」
     了解しましたと、ジュリオの体を引きずる黒ローブの男の事など、もう眼中にないダーハム・グレイソンは、またボクに視線を戻してニコリと、白く濁った瞳でボクを見た。
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